瘴気の金槌
僕は1人荒野で新しく手に入れた武器、『瘴気の金槌』を握りしめる。武器の能力を確かめるためだ。
『瘴気の金槌』
それは魔王武器と呼ばれるもので、僕がこの世に撒き散らした恐怖や畏怖を力と化し瘴気を撒き散らすそうだ。
瘴気ってなんだ?
『それはわたくしがお答えしましょう。要は悪い空気です』
僕の手の中の金槌が念話で答えてくれる。
「悪い空気?」
『そうです。悪い空気です』
悪い空気ってどういうものなんだろうか?
「懸命に考えた、必殺の駄洒落がスカッたようなそんな感じなのか?」
『はい、まあ似たようなものだとは思いますが、もっと精神的でなくて肉体にきます』
「肉体的にって具体的にどんな感じなんだ?」
『そうですね、口では解りにくいから実際にあふれ出させてみましょうか?』
ふとここで我に返る。ハンマーを握りしめて話しかけている僕って傍から見たらかなりやばい奴なんじゃないだろうか?
『すみません、発声器官があったら声を出せるのですが、もっと魔王力を集めて私を進化させて下さい。頑張って目とか口にとかを生やしてみせます』
それはそれで、またよろしくないな。目と口のついたハンマーと話している自分を想像してみる。無いな。これ以上魔王力を増やさないよう努力しよう。
『ご主人様、冗談ですよ、進化したら風系の発音魔法を覚えますから、心おきなく魔王力を集めて下さい』
「そうか、それなら安心だな」
ここで気付く。そうなったとしてもハンマーに話しかけてるおかしな人というのは変わって無い事に。
『それよりそんな事よりも、出してみませんか?瘴気』
「そうだな、たのむ」
『承知致しました』
僕が握りしめたハンマーから黒い靄のようなものが溢れ出る。靄が僕に触れる。ひんやりして気持ちいい。瘴気って夏にはいいな。家の中を瘴気で満たしたら、毎日導師ジブルに出してもらっている氷も要らなくなるのではないだろうか?
『それは止めた方がいいと思いますよ。足下見て下さい。瘴気が触れた所の草、枯れてますよ。このレベルの瘴気なら強い人間とかでしたら少し気分が悪くなるくらいですが、子供とかでしたら昏倒するかもしれませんし、小動物なら死ぬかもしれないですよ』
「大丈夫だ。家にはそんなヤワな生き物はいない。涼しくなった事を喜んでくれると思う。それにそれなら害虫駆除できるんじゃないか?」
特にドラゴンの化身アンなどは涼しくなった事を諸手を上げて喜ぶ事だろう。
それについ最近うちにゴキブリがでてマイが半狂乱になったばかりだ。瘴気をつかったら家の中に隠れているゴキブリを殲滅できるのではないだろうか?
隣の『みみずくの横ばい亭』でも、どうしても客席に落ちた食べ物のカスとかのお陰でゴキブリに悩ませられている。
もしかして、この『瘴気の金槌』ってとっても便利なものなのではないだろうか?
『それに瘴気で満たすと視界も悪くなりますよ』
と言うことは、やはりこの武器の最大活用方法は害虫駆除だな。
『まじですか?魔王武器として生まれて、まさか害虫駆除に使われるとは……』
「すまん、力を貸してくれ」
『……しょうがないですね……』
彼はとても頑張ってくれて、マイにも『みみずくの横ばい亭』のマリアさんにもとってもとっても感謝された。