夏の日差しの中で
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強い夏の日差しの中で、僕は今草などむしっている。僕の家は『みみずくの横ばい亭』の裏の空き地を借りて置いているのだか、最近やたら回りに草が生えてきた。それで、一念発起してみんなで草刈りをしようとなった次第だ。
草刈りメンバーは僕、マイ、ドラゴンの化身アンそれに魔道都市の見た目幼女の導師ジブルだ。
「なあ、なんて言うか意外に減らないな。ジブル、雑草を撲滅する魔法って無いのか」
隣でちまちまと草をむしっているジブルに聞いてみる。
「そんな都合のいいものないわよ。魔法って万能じゃないのよ」
ジブルは脇目も振らず黙々草をむしっている。こいつ意外と地味な事に集中するタイプなのか。
「使えねー奴だな。おい、アン、ブレスで一網打尽に出来ないのか?」
少し離れた所でこれまたちまちまと草をむしっているアンに声をかける。
「ご主人様、しくじったら、多分家とかに引火しますよ」
多分、アンはなんかしでかす。場合によってはこの街が焦土と化すかも知れない。
「マイ、なんかいいアイデアないのか?」
遠くのマイに声をかけるとビクッとする。よく見るとマイの前の草が軒並み枯れている。なんか面白そうなので行ってみる。
「マイ、何したんだ?」
「あ、あのね、あたし昔、腐食の息ってスキル手に入れたじゃない、それを少し試してみたのよ」
恥ずかしそうにマイが話す。おお、それは便利だ。マイの息で草が枯れるのか。ビジュアル的にと女性としてはどうかとは思うが、正直、炎天下草をむしるのは飽きた。
「マイ、でかした。どんどんマイの息で草を腐らせてくれ!」
「ご主人様、草を腐らせる。まだ、いけますね。マイ姉様、臭い息で草をどんどん腐らせましょう!」
いつの間にかアンがそばに来ている。
「アンちゃん、あたしの腐食の息が臭いかどうか試してみる?鼻が腐って落ちるかもよ!」
マイがアンに向かって口を突き出す。チューしようとしてるみたいだ。
「マイ姉様、ごめんなさい。言い過ぎました。あっ、綺麗な蝶ですね」
何処からともなく、蝶が飛んで来た。黒い羽に水色の模様が入っていてとても綺麗だ。蝶がマイが枯らした草の上にヒラヒラと飛んでいく。とたんにその綺麗な羽はくすんだ茶色に変わり、ヒラヒラと地上に落ちていく。
「…………」
「マイ、気にするな。誰にだって失敗はある」
「そうですよ、私なんていつでも失敗しまくってますよ」
マイは俯いて答えない。
「ごめんなさい…」
マイから涙の雫がぽたぽたと落ち、地面に染みを作る。
どうしようか?
僕は収納からエリクサーを出して霧状にしてマイが枯らした草の辺りに撒き散らす。少しの間、マイの前に虹がかかる。そして、雑草は元のように生い茂り、その中からさっきの蝶が綺麗な羽を見せびらかすように現れて遠くに飛んで行った。
「じゃ、マイ、草、むしろっか?」
「うん!」
涙の跡はあるけど、マイの顔に笑顔が戻った。