メインウェポン(終)
時間なくて、後で色々修正します。
いつの間にか奇妙な所に僕はいた。ピンクの空に、白い雲、芝のような短い草が生えた大地が地平線まで続く。
目の前に、白いテーブルと椅子が6脚。テーブルには緑のパラソルがついてる。テーブルの上には6つのカップとソーサーが並んでいて、湯気を立てている。
ここはなんなんだ?悪夢の中か?
「ザップ、ここはどこ?」
振り返るとマイがいる。その他に知らない女性と男性が2人づついる。なんかマイに違和感を感じる。
「マイ姉様、心なしか胸、大っきくないですか?」
角が2本生えたやたらプロポーションが素晴らしい女性が口を開く。その声はアンだ。ドラゴンの化身アンだ。
「もしかしてアンちゃんなの?あたしの胸はいつも通りよ」
「え、マイ姉様、ご主人様背が低くなりましたね」
「いや、アン、お前が大っきくなってんだ」
「まじですか!ご主人いつの間に着替えたんですか?」
え、僕はいつの間にかハンマーを手にミノタウロスの腰巻きを腰と首に巻いた猿人間スタイルになっている。
「ザップ、皆さん聞いてください。ここでは姿は心で望んだものになります」
もう1人の女性、背が高くまたまたプロポーションが激しい女性が口を開く。その声はジブルだ。よくよくみると、ジブルが大人になったらこんな感じになりそうだ。
「ここは継ぎ目のない世界、要は夢の中のようなもので時間の流れもないわ。時の流れにうずもれた太古の魔法よ。そこのコーヒーには心を落ち着ける効果があって誰かがコーヒーを飲み干すか、コーヒーが冷めたら元の世界に戻るらしいわ」
ジブルはそう言うとテーブルに付く。
「ということは、そこの2人は勇者の剣と瘴気の金槌か?」
僕は2人の男性を見る。
「はい、その通りです。私は瘴気の金槌です」
澄んだ低い声の、黒い髪にすらっとした体の黒いスーツの男性が頭を下げる。
「オレ様は勇者の剣。面白い魔法だな。まさか人間になれるとはな」
ツンツン金髪の皮のパンツに破れたシャツにアクセサリージャラジャラの男が口を開く。こいつが勇者の剣?どう見てもチンピラだ。
なんか、正直理解が色々追いついてないが、とりあえず僕達全員椅子に腰掛ける。
「ごめんね、ザップ。武器が話すって本当だってのね」
少し引き気味でマイが金槌と剣を見る。
「2人ともご主人様よりかなりのイケメンですね」
「余計な御世話だ。と言うわけでさっさとコーヒー飲んで帰るぞ」
「待てよ!」
「待って下さい!」
武器達が立ち上がる。シンクロしてる。仲良しさんか?
「ザップ、こいつと決着付けさせてくれ!」
剣が槌にガン垂れまくる。
「ザップ様。私もこいつに身の程をわきまえさせてやりたいです」
槌が腕を組んであごをあげ、剣を睨みつける。
「やっぱり、勇者武器と魔王武器。仲が悪いのね」
ジブルが楽しそうな顔して2人を見ている。イケメン2人が争うのを見たいのかもしれないが、決してお前を賭けて争ってる訳じゃないぞ。
「ザップ、戦わせてあげたら、ここって心の世界なら戦っても壊れたりしないんじゃないの?」
マイはそう言うとコーヒーを口に含む。イケメン達に興味無さそうなんで、一安心だ。
「そうですね、相撲、相撲がみたいです。相撲に勝った方がザップの1番でいいんじゃないですか?」
相撲、男の相撲など見たくない。どうせならアンとジブルの相撲が見たい。しかも僕の1番って気持ち悪い表現だな
「私がザップ様の1番と言うことを証明してやります」
「オレ様がザップの1番だ!」
武器達の言葉に、マイはコーヒーを吹き出しそうになってむせている。
「はっけよい!のこった!」
ジブルの掛け声を皮切りに、武器達は体当たりする。
丸い円の流れから出るか足以外の所を地面に付いたら負けというルールだ。
「勇者の力みせてやるぜ!」
剣が槌を殴り付ける。へっぽこな勇者の力だ。
「これが魔王の力だ!」
槌が剣に頭突きをかます。地味な魔王の力だな。
しばらく打撃戦を繰り返したあと、2人は4つに組み合う。抱き合っているようにしか見えない。ジブルがぴょんぴょん跳び跳ねながらキラキラした目で見ている。奴には眼福なのか?
「長いわね」
マイが呟く。
「うん、長いな」
2人は顔を真っ赤にして唸っている。本人達は必死の力比べをしてるのだろうが全く面白くない。
「雑魚どもが!」
野太い声がして、武器達の所に1人の男が現れる。禿頭にヒゲもじゃの顔、はち切れんばかりの筋肉に覆われた体に着ているのはボロボロの腰巻きだけ。しかもあれは僕とおそろだ。
「胸を貸してやる。かかってこい!」
武器達は離れて顔を見合わせると頷いて、マッスルに襲いかかる。
ゴスッ!
剣が円の外に殴り飛ばされる。
ビタン!
槌が華麗な上手投げで地面に叩きつけられる。
「貴様らがザップ様の1番になろうなんて100年早いわ!ハッハッハーッ」
マッスルは腕を組み哄笑を上げる。
「お前は誰だ?」
「ザップ様、私はザップ・ハンマーです」
そう言うと、マッスルは走り去った。
それを僕達は口半開きで眺めていた。
辺りが白い光り包まれて、僕達は元の武器倉庫にいた。
僕らは無言で瘴気の金槌を手に帰途についた。
「私達、アレを使い回していたのね…」
マイがぼそりと呟く。僕のハンマー、擬人化したらあんなのになるのか…