メインウェポン(続続)
門をくぐるとすこし庭があり、直ぐに建物に入る。大きなホールを突き当たり、扉をくぐり数回曲がって、下る螺旋階段の有る部屋に着く。
それをぐるぐる下って行く。しばらく下りると目が回ってくる。階段、長い。また登るのかと思うと気が滅入る。やっと階段が終わり、長い通路に出る。通路にはギロチン式の落とし扉が幾つかあり、封鎖出来るようになっている。
厳重だな。通路を突き当たり、大きい扉を開けるとドーム状の大部屋に出る。
その中央にはサイコロのような真四角の小屋が見える。小屋は石造りで、頑丈そうな石の扉で閉ざされているが、ジブルが手を当てると自動に奥に開いた。
「お腹壊すだけの呪いの武器を保管するには厳重すぎないか?」
「ん、他が危険なのばっかなのよ、死ぬまで戦いつづけるやつとか、死ぬまで踊りつづけるやつとか、死ぬまでお腹壊しつづけるやつとか、シャバに出しちゃいけない奴ばかりなのよ」
なんかジブル、僕にだけ言葉使いがぞんざいな気がする。死ぬまで系の武器が多いな。ん、死ぬまでお腹壊す?
「ジブル、もしかして例の魔王武器って死ぬまでお腹壊すのか?」
「多分、ザップなら使えるから大丈夫だと思うわ」
なんか答えになってない気がするが、せっかく来たのだから見るだけ見てみよう。
「ザップにおしめ買わないとね」
「そうですね、介護にはレリーフを雇いましょう」
マイとアンが剣呑な会話をしている。マッスル黒エルフにおしめを変えて貰っている自分を思い浮かべてしまう。じ、地獄だ。
「やっぱ。気が変わった。帰るぞ!」
「「「だめっ!」」」
3人が僕にしがみつき、連行されて行く。すこしご褒美くさい。
部屋の中には壁全面に幾つもの武器が掛けてある。僕らは辺りを眺める。これら全てが死ぬまで何かをし続ける呪いの武器なのだろうか?とりあえず1番ヤバそうな奴を収納に入れてアンの手元に出現させて見る。大げさなリアクション付きでアンは跳びすさる。ドラゴンなのにチキンだな。
「ご主人様、なんばしよっとですか!」
アンの口から南方の方言が飛び出す。灼熱の真夏の太陽の影響だろう。
「次したら、がちで頭噛みつきますよ!」
そんなに怒らなくてもいいだろうに。
「ザップ、駄目よ、アンちゃんがドラゴンになって暴れたらあたしたち生き埋めになるわ。せめてジブルで試しましょう」
ジブルが大げさに飛び退く。
「ザップ。マイさんも、何やってるんてすか!アンさんのは死ぬまで食べつづけるやつ、私のは死ぬまで話しつづけるやつですよシャレになんないです。早く元の所に戻して下さい!」
ジブルがキーキー叫ぶ。
「ん、それなら別に呪いでもなんでもないんじゃ?今と変わらないだろ」
「あ、それもそうですね。ってそんな訳ないでしょ、私も1人の時は誰とも話しません!」
僕とマイはしぶしぶ武器を元に戻した。
1つの武器が僕の目に留まる。気がついた時には僕はそれに手を伸ばしていた。
『お待ちしておりました。これからはよろしくお願い致します』
低いイケボが僕の頭に響いた。