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第四十五話 荷物持ち村を出る


「なあ、悪いが、これを食べたらとっとと出て行ってくれ、この村はゴブリンの集団に狙われていて、あの方たちだけが頼りなんだよ、機嫌を損ねたくないんだ……」


 主人の老人は表情のない顔でそう言うと、僕達の前にパンとなんかの煮込みを持ってきた。煮込みからはうまそうな湯気がたっている。


「爺さん、俺たち金持ってないぞ」


 微かに老人の口角が上がる。


「見りゃ解る。困ったときはお互い様だ、依頼料ふんだくられたから金ねーから、大したもんじゃないが遠慮せず食え」


「かたじけない」


 僕は礼を言うと食事を頂いた。パンは岩のように固く、煮込みは少しの肉と後は根菜ばかりのもので、決して美味しくない。むしろ不味い。けど、僕らは一心不乱に平らげた。本当に久しぶりの人間の食事、不味いけど最高に美味かった。


 僕らは店主に礼を言い迷惑をかけないように早々と立ち去った。


「嫌な奴らもいるし、他の村に行きましょう、また少し遠回りになるけど」


「そうしよう」


 村の外れでは、さっきの子供がチャンバラをして遊んでいた。


「僕の名は、マカブルのザナドゥ! 猿人間成敗してやる!」


 子供の一人が僕の前に立ち塞がる。いつの時代も子供は英雄に憧れるものなんだな。


「おお、怖い怖い。強そうだな、けど、魔物からは逃げろよ」


 僕は子供の頭を軽く撫でてやる。


「猿人間が喋った! 逃げるのか?」


「ああ、逃げるさ、怖いからな」


 僕は子供たちに手を振って村を後にした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「あれじゃない? ゴブリンの集団って」


 マイの指差す方にゴブリンの一団がいる。ひょろひょろに痩せていて裸に近く、折れた剣や木の棒など貧相な武装をしている。

 ゴブリン、一般的な魔物で子供くらいの身長に緑色の肌、頭髪は無く耳が尖っている。力は無いがずる賢こく少数なら問題ないが、徒党を組むと脅威になる事がある。性格は邪悪でどんなに矯正しても変わらない。駆け出しの冒険者達の討伐対象だ。繁殖能力が極端に強く、倒しても倒しても絶滅する事がない。


 まあ、『ダンスマカブル』のメンバーだったらあれ位は何とかなるだろう。ゴブリン達は僕達に気付くが、無視して村の方に向かって行った。

 おかしいな、白昼堂々とゴブリンが村を襲うって聞いた事が無い。あいつらは夜行性のはず。けど、考えても答えは出ないので、気にせず僕らは先に進んだ。


 しばらく進むと、またゴブリンの一団を見かける。今度のゴブリンは、さっきの奴らと違って完全武装だ。そうか、さっきのは陽動だったんだ。


「戻るぞ!」


 僕は村の方へ駆け出す。


「あいつらだけ倒せば大丈夫じゃないの?」


 マイが僕の横に並ぶ。


「あいつらだけならな、他にもまだいるかもしれん」


「ご主人様、あの村がどうなっても私たちには関係ないのではないでしようか? 無礼な冒険者の事などどうでもいいのではないですか?」


 アイも僕の隣に並ぶ。こいつらいつの間にか足早くなったな。


「ああ、どうでもいいさ。けど、飯食ったからな」


 その分くらいは働かないとな。村の無事を祈りながら僕は全力で走る。


  

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