盗賊職確保
「いらっしゃいませ。はじめまして、ピオンです」
自称忍者の少女ピオンが僕達に頭を下げる。命を狙われてたから気にしてなかったが、メイド服に身を包むととっても可愛らしい。小柄で少しつり目で僕の大好きな猫ちゃんみたいだ。
「へー、あなたがザップを毒殺しようとしてた暗殺者なの……」
マイが死んだ魚のような目でピオンを見る。
「ここに呼ばれた時点で女の子かもとは思ってたけど、なんだかねー……」
ん、なんかマイは勘違いしてないか?
僕はこいつを雇用しようとしてるだけで、ただのビジネスだけの関係でしかない。
「また、ご主人様が美少女を拾って来ましたね。もしかしてハーレム的なものを作る気なんですか? 私的には、たまには美少年の1人や2人連れてきて欲しいものですね。マイ姉様、1度しっかり調べた方が良さそうですね、ここ以外にもまだ幾つかハーレム持ってるかもしれませんよ」
ドラゴンの化身のアンが根も葉もない事を言う。また拾って来たは心外だ。ピオンの前に獣人の女の子をここに預けた以外そんな事をした覚えは無い。
僕達が今いるここは『みみずくの横ばい亭』。
魔道都市の王女ラパンと、元聖教国の大神官ロリ巨乳のシャリー。先日盗賊都市で助けた猫耳少女ケイに、今目の前にいる忍者少女ピオンがメイドとして働いている。なんか最近は、三食昼寝付きの職業訓練所になりつつある。
ここのところ儲かってるみたいで、いつのまにか店内が拡張されている。
ロリロリのメイド服を見るたびに記憶を失ってラパンと同化してた黒歴史が頭をよぎる。あれを着て笑顔で『いらっしゃいませー』なんて言ってた自分が恥ずかし過ぎる。
「まてよ、拾って来たは心外だな。俺はピオンを雇う予定だ。こいつはなんと盗賊だ。俺たちの中に誰1人と居ない補助職だ。これで迷宮で宝箱見つけた時も開けて貰える。爆発で指ふっとばしたり、毒針でラリったりしなくてよくなるんだぞ」
僕は力説する。
僕達は宝箱の罠を解除出来ない。今までは力押しで開けて来たけど、彼女を連れて行ったらその苦痛から解放される。ちなみに罠に引っかかるのはいつも僕の役目だった。
「ザップ、盗賊じゃない、忍者。補助職じゃない。戦闘職」
ピオンが細かく訂正する。そうなのか戦えるのかモアベターじゃないか。
少しづつマイの目がキラキラしてくる。罠解除が出来るという所が刺さったのだと思う。
「それにただの雇用関係じゃない」
ピオンは人差し指で自分の唇をツンツンする。
マイとアンが怪訝そうな顔をする。言うなら言えばいい。僕には何もやましい事は無い。けど少しあの事を思い出して顔が熱くなる。
「私、ザップとチューした」
「「ええーっ!」」
マイとアンがハモる。
「まて、俺の話を聞いてくれ」
僕は事つぶさに経緯を話した。ときにピオンが補足しながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「有罪!」
マイから判決を言い渡される。むぅ。
「まず、ザップの身体能力ならチューをかわせたはずです。この身長差なのでもしかしたらザップは自分から近づいた可能性さえあります」
「異議ありっ。ご主人様はヘタレです。自らチューしに行く勇気などあるはずが無いです」
アンの弁護は明らかにディスだ……
「まぁ、そうですね、けど、チューしたのは事実。首輪や腕輪で拘束しようとしたというのもよろしくないです。よって、ザップはお風呂も含む家掃除の刑に処す」
意外にソフトな刑に僕は胸をなで下ろした。