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 禍福はあざなえる縄のごとし(後編)


『蟹はデカイ奴でお願いします』


 僕は心の中で叫ぶ。個人的にエビの尻尾や、小魚の頭は勘弁して欲しい部類の人間だ。苦いのが美味いという人はいるが、苦いものは苦い。苦いものは勘弁して欲しいものであります。


 よく、知り合いがいる食いもん屋とかに行くとサービスと称してめっちゃ増量してくれたりする。近い人だと『みみずくの横ばい亭』のマリアさんだ。

 食えないって、人間そんなはんぱない量食えんつーの。

 けど、悪意が無いから苦しくったって完食はマストだ。今はそういう感じなのだ。

 丸ごと沢ガニは勘弁して欲しい。しかも半生。

 苦手なものをガンガン食するという苦行を何とか乗り切った。泣きそうだ。まじツイて無い。雨の中馬車を押した見返りが、ほぼ罰ゲームだ。御者に多分引き攣った笑いを与えながら僕はやっと寝る事が出来る。

 またツイて無い事に隣りに宿泊したのは若い男女みたいで、なんか声が聞こえてくる。気になって眠れないつーの……


 あんま眠れずに朝を迎え、そして修理が終わった馬車に揺られて出発する。

 馬車で座って眠ってやろうかと思っていたが、眠りに落ちたと思った瞬間に乗り合わせた赤子が泣く。おぅ、またまたツイてない。


 寝る。赤子泣く。

 寝る。赤子泣く。

 寝る。赤子泣く。


 赤子泣く。寝る。

 赤子泣く。寝る。

 赤子泣く。寝る。


 寝れるかボケェ! けど相手は赤子。怒るに怒れない。何故に僕が寝付いた瞬間に泣きやがる。エスパーか? それとも新手の拷問か?


 睡眠不足で馬車に酔い気持ち悪くなりながら何とか王都につく。


『王都で嘔吐する!』


 いまいちだ。やはり汚い表現が混じるとエレガントさに欠ける。けど、何とか嘔吐はせずにすんだ。


 何気に仲良くなった乗客達と御者に別れを告げてポルトの屋敷に向かう。今回は余計な事はしてないから、僕のいい噂を広げて欲しいものである。


 屋敷に着くと、余り待たされる事なくポルトと会う事が出来た。


「いやね、今度貴族の娘さん達と飯なんか食うんだけど、俺の気に入ってる娘が見たいって言うんだよね、お前を」


 ん、こいつ何言ってるんだ? さんざん苦労して来たらそんなどうでもいい用事だったのか? だからチケットが一枚だったのか……


「ポルト、革命って言葉知ってるか?」


「まて、まて、まてーい! 俺だって大変なんだよなんか欲しい物あるなら頑張るから協力してくれよ」


 僕は取り出したハンマーをしまう。しょうがないお仕置きは勘弁してやる。


 その晩、ポルト主催のディナーパーティーに参加する。なんと、ポルトの気に入ってる女性は若くて綺麗だったが、それ以外は太ったおばさんばかりだった。しかもなんか知らんが僕の体をベタベタ触って来やがる。あと少しで城にメテオ・ストライクを出現前させる所だった。とことんツイてない。


 うちひしがれながら城を後にする。満天の星空が綺麗だ。『禍福はあざなえる縄のごとし』とかいうことわざがあるが、嘘だ。なんか知らんが、ツイて無い事ばかりだ。決して帳尻があってない。


 けど、負けてたまるか!


 ツイてる人間より、ツイて無い人間の方がより何を成し遂げるにも力が必要だ。運に左右されない実力をつければいいだけだ。そう、自分に言い聞かせ、僕は拳を握り帰途に着いた。


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