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 魔法の絨毯に乗って4(守りたいんだ)


「待たせたな。帰るぞ」


 ザップは絨毯に飛び乗る。そして、気を失っている少女を後ろに寝かせる。あ、この娘って、あたしが捕まったときの子だ。

 上から見ていて大丈夫なのは見えていたけど、正直、気が気では無かった。あたしの体調が万全だったらその横で戦いたかったのだけど、今は『封印』と『弱体』の腕輪で足手まといにしかならない。


「ザップ、おかえり」


 あたしはザップの腕にしがみつく。誰も見てないので、今日だけはいいと思う。ザップは前を向いたままだけど、眉がぴくっと動いたのをあたしは見逃さなかった。


「絨毯、王都に頼む。高度高めでそこそこのスピードでこいつも落とさないように」


 絨毯はザップの言葉通りに飛び始める。人の言葉を理解する絨毯だそうだ。


 足下で景色が流れていく。上に行くほどそれが緩やかになった。森や川がまるで作り物のように遙か下に見える。けど、風は少ししか感じがない。ザップが何かしてるんだと思う。


「ザップ、魔法の絨毯どうしたの?」


 これって確か前に乗ったのと同じだよね。


「ああ、ジブルに魔道都市から送ってもらった。マイが居なくなったって聞いてあいつも焦ってたよ。だから特別に今回の使用料は1割引きで貸して貰えた」


 え、1割引き? あたしの命がかかって居たのに、たった1割引き……


 ジブルにとってあたしの命は安すぎる。あの年増骨娘、帰ったら嫌いなピーマンが入った料理を残さず食べさせてあげるわ!


「ザップ、そう言えば、なんであたしがここにいるって解ったの?」


 もしかして、愛する者や大事なものの場所が解るスキルとかであたしを見つけ出してくれたとか。まあ、冗談でもザップはそんなロマンチックな事は言わないわよね。


「マイが連れ去られるのを見た人間がいたから攫われたのは解った。お前が簡単に捕まる訳が無いのと、マイのタブレットとポータルが収納にはいったままだったから、何らかの魔道具で弱体化とスキルを封印されたんだと思った。ジブルにそういう魔道具の流れを洗ってもらったら、あの街の『公爵』という人物が、金に糸目をつけずその手の魔道具を買い集めていると言うのと、獣人の綺麗な娘を攫っているという噂を聞いたから、まずはここに来た」


 あ、今、ザップ、あたしの事を綺麗な娘って言った。間違いなく言ったわ。ザップって、やっぱり、あたしの事そう思ってたんだ。あたしはしばらくザップの方が見れなかった。だってニヤけちゃうから。


 それにしてもザップは強かった。群れ寄る敵を蹴散らし、収納から様々な魔法とかを放ちまくった。


「ザップ、すごかったね」


「ん、大した事無い。アンやジブルに次々に魔法とかを収納に入れて貰って放っただけだ。だが、建物を破壊しまくっただけで、人は巻き込んでない。『メテオ・ストライク』も放つ前にもジブルの魔法で城の人間が避難したのを確かめて放った。ただ派手だっただけだよ」


 上から人質を取られたのも見てたけど、圧倒的だった。

 最近、もしかしたら、スキル無しだったらあたしの方が強いかもなんて思ったりしてたけど、そんなの無意味だ。実戦ではあるもの全てを使うのは当たり前だ。


 ザップは強い。


 追いついたかもと思っていたけど、実際は逆に引き離されていたのを実感した。


 あたしはもっともっと強くならないと……



 この人の横で生きて行くために!



「ザップ、あたし、もっと成長するアイテムが欲しい……」


 ザップはいつも成長補正があるハンマーを愛用している。それ以上の補正がついたアイテムを使わないと物理的に追いつけない。


「いや、マイはそのままでいい」


 え、ザップ、ここでもしかして、あたしをずっと守ってくれるとか言っちゃうわけ? 誰も居ないことだし。


 あたしは耳をピンと立ててザップの次の言葉を待つ。


 心臓がトクントクンする。


「な、なんて言うかな、それくらいが俺的にはちょうどいいと思う。ルルやミカくらいになると、なんていうか目のやり場に困ると言うか……」


 は?


 ルルやミカ?


 ザップは何言ってるんだろう?


 なんかザップなのに照れてもじもじしてるように見える。その顔があたしの抱き締めてる腕をチラ見する。


 あたしは顔が熱くなる。


 言葉が足りてない……


 あたしの言動を思い起こすと、胸が大っきくなりたいって言ってるようにも聞こえる……


「ザップの馬鹿……」


 あたしは更に抱きついて、この朴念仁を困らせてやる事にした。




『魔法の絨毯の上で……』




 王都で流行った歌があたしの頭の中をリフレインする。



『呪文は使えないけど……』



 ザップは魔法はほぼ使えないけど、いつもあたしに魔法より素晴らしいものを見せてくれる。



『君の事、守りたいんだ……』


 

 ザップの微かな鼻歌がそういった気がした。


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