第四十三話 荷物持ちからまれる
「確かこっちのはずよ」
僕達は、マイに従って轍がボコボコした田舎道を歩いている。
「マイ姉様って何でここら辺に詳しいのですか?」
アイがマイの横に行って尋ねる。僕もそれは思った。
「それは、荷物持ちでいろんな所行ったからよ、普通の人より力持ちだし」
「どんな村なんだ」
「普通の村よ」
普通の村か、それなら僕の格好を見て驚かれるのでは……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村についたのはちょうどお昼時っぽい。道を挟んだ質素な建物から煙が上がっている。
マイのリュックを僕が背負い、マイとアイには武器を担がせて冒険者っぽい雰囲気を出させてる。僕がその従者という体だ。
「確か村の中央に酒場があったはずだから、そこにいきましょう」
マイについて僕達は村の中央の道を歩く。期待してたのに人に全く出会わない。
「あっ! 猿人間だ! 猿人間だ!」
声がして振り返ると、子供たちが数人、僕を指差している。野人、蛮族はまだ許せるが、猿人間はひどい。ひどすぎる。猿人間ってことは半分動物で人間辞めている……
「猿人間! ぷぷぷっ!」
マイはうずくまって、腹を抱えて笑っている。失礼だな。
「猿人間って、ご主人様は人間なのですか? 猿なのですか?」
アイは僕と距離をとってまじまじと僕を見る。僕と同類に見られたくないのだろう。
「猿人間は、猿だーっ!」
子供たちはそう言うと僕に石を投げてきた。この悪ガキどもが!
「こらこら、駄目よ! ザップはこう見えても人間なんだから!」
マイが腰に手を当てて子供たちをたしなめる。なんかフォローになってない気が……
「ギャー、猫人間が怒った! 逃げろー!」
子供たちは一目散に逃げ出した。
「ザップ、大丈夫?」
「ああ、大した事ない」
「ご主人様は思いの外温厚なのですね、命令とあらば、子供たちお仕置きしてきますよ!」
アイのお仕置きは危険すぎる気がする。
「気にするな、子供だからな」
「ザップがそう言うのならいいわ、早く格好なんとかしないとね」
マイが歩き始め、僕達はついていく。
程なくして少し大きめの建物につく。酒場の看板がでている。
酒か、酒なんてここしばらく飲んでないな。僕はとってもお酒に弱いので余り飲まない。けど、嫌いではないので、久しぶりに嗜みたいものだ。
マイが扉を開けて入る。僕達もそれに続く。
うす暗い店内にはテーブルについた冒険者の1パーティーと、カウンターには店主と思われる老人がいた。
冒険者を観察する。げっ、見覚えのある奴らだ。なんでこんな田舎にいるんだ?
僕は情けない事に、咄嗟にマイの影に隠れる。けど目ざとく気付かれて、冒険者のパーティーリーダーの剣士が僕の方に近づいてくる。
「あれーっ! この汚え野人見たことあると思ったら、ゴミ箱のザップじゃねーか?なにしてんだ? ゴミ拾いか?」
長身金髪の剣士が近付いて来て、僕の鼻先ぎりぎりまで顔を近づける。相変わらず嫌な奴だ。
「臭え、臭え、ゴミ臭え! 早く消えろクズが! 酒が不味くなる」
そう言うと剣士は酒臭い息を僕に吐きかけて、テーブルに戻って行った。