水竜
薄暗い海の底を僕達は歩いている。僕の後ろにはマイと見た目幼女の導師ジブルとその後ろにはでっかいドラゴンのアンが付いてきている。
かにを狩るのに夢中になって遠くまで来すぎた。水中呼吸の魔法の残り時間を示す青く変色した爪はあと2つ。あと二十分で魔法の効果は切れる。マイとジブルの手を握って収納の力を使った高速移動で陸を目指すか、それか水面に出てアンに乗って陸を目指すかどっちにしようか迷う。
水中では会話出来ない。なんか意思疎通のいい方法は無いだろうか。筆談、そうだ、僕はタブレットを出してタブレットにさっきの選択肢を打ち込む。そしてマイとジブルに見せる。
『あたしは、海の中がいいわ。せっかくだし』
マイが自分のタブレットを出して見せる。ちなみに僕達はタブレットに入力する時に浮かばないように斧を足で挟んでいる。なんかマイが斧の柄を足で挟んでいるのはなんかセクシーだ。つい目がいってしまう。願わくば、僕も挟まれてみたいと少し思ってしまう。
『いったん海の上に出て、アンさんの上でもう一回魔法をかけなおすという手もありますよ』
ジブルが自分のタブレットを見せる。こいつは何故か水に浮かばない。何らかの魔法か、それとも水より比重が重いのか?
意見が割れたな。アンはドラゴンだから意思疎通が難しいしどうするか?
ん、そういえば回りに沢山いた魚が一匹も見えない?
なんかさっきより少し寒くなった気がする。海水が、海が揺れる。なんか嫌な予感がする。
『なんか変だ逃げるぞ! 俺の手を掴め!』
僕はタブレットをマイとジブルに見せると2人の手を握り僕とマイの斧を収納にしまう。
収納に海水を出し入れする事で前方に高速移動する。振り返るとしっかりアンも付いてきている。
僕達の横を大きな黒い影がよぎる。
蛇?
いや、鯨?
それはみるみる僕達を追い抜くと急転回し、僕達の進行方向の陸の方から迫り来る。
水竜!
なぜここに? 少し騒ぎすぎたか? それにしてもクラーケンがいて次は水竜。なんて危険な海域なんだ……
大きな体から伸びた長い首、ヒレのような両手両足。銀色の体をびっしり鱗が覆っている。
僕は高速移動しながらポータルを幾つか射出し、細かい動きが出来るように構える。
やり過ごす!
海の中は奴のフィールドだ。陸での決戦に持ち込んでやる。
僕は向かって来る水竜を大きく迂回しながらかわす。
水竜を見ると全身が光輝き始めた。
なんだ?
辺りが光に包まれる。
『ガァアアアアアッ!』
僕は声にならない叫びを上げる。これはライトニングの魔法か? しかも広範囲でかなり強力な。
痛い! 熱い! 痺れる!
僕は力が入らず、マイとジブルの手を離してしまう。僕とマイは浮かび始め、ジブルは沈んで行く。
体を動かそうとするが痺れて動けない。
なんとか意識を保ちながら僕は浮上していった。
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