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 海中


 なんか変な気分だ。


 僕たちは今、海の中を歩いている。どういう理屈かと言うと、魔道都市の導師ジブルに海中呼吸の魔法をかけて貰ってるからだ。この魔法は秀逸で、100分持続して、その残り時間は両手の爪に現れるようになっている。魔法をかけられた時に、両手の爪は水色に変わり、10分おきに左手の小指から元に戻って行くという仕様だ。魔法が切れて溺死しかけるという事自体を避けるために改良したそうだ。

 まあ、便利だと思うが、爪が水色になるのはマニキュアをしてるみたいで、僕は気持ち悪い。


 パーティーは、僕、ジブル、マイ、ドラゴンの化身アンの4人で当然皆水着だ。何故かジブルは水の中を普通に歩いているのだが、僕達は浮かんでしまうので、巨大な重い斧を持って浮かないように歩いて行く。結構遠くまで進んだので、水面はかなり上の方に見える。とても澄んだ海なので、ここでもかなり明るい。

 最近溺れてばかりいるので、僕は心臓の鼓動が落ち着かない。指の色が戻るのが右手に達したら即座に陸を目指す予定だ。


 さっき急に海が深くなった所から辺りの景色が激変した。白い砂浜一辺倒だったのが、岩にカラフルな珊瑚礁が生えて、大小様々な魚が泳いでいる所に出た。なんて言うか、まるで別世界だ。歩きにくくはなったけど、その景色を眺めているうちに、いつのまにか僕の恐怖心は消え去った。そばに来た手のひらくらいの大きさの魚に手を伸ばすと、チョイチョイっと僕の指をついばんだ。うっ、なんか可愛いな。


 そんな感じでお魚と戯れてたら、僕の脇腹を誰かがつついた。マイだ。何というか、胸の大きいマイとジブルは動くたびに胸がふよふよ動く。流石に今はサングラスを外しているのでガン見出来ないのが残念だ。急に今サングラスを出してつけたらあからさま過ぎるだろう。


 マイが指さした方にでっかい何かがゆっくり動いている。カニだでっかいカニだ。


 さらにマイが僕の脇腹をつつき、上を指差す。なんか話したいって事かな?

 僕は斧を収納にしまい、マイに手を引かれて水面を目指す。悲しいかな、僕は上手く泳げない。


「プハッ」


 肺から僕達は水を吐き出す。これは結構気持ち悪いな。


「ザップ、あのカニさん今日のおかずにしましょう、あれって渡り蟹だから食べられるはずよ。せっかくだから出来るだけ傷付けないで捕獲しましょう! 弱点は口かふんどしの1番上の所から体の中心に向けて剣を刺したらしめられるはずよ」


 相変わらず、マイは食べ物全般に詳しいな。多分いつも勉強しているのだろう。頭が下がる。そのお陰で僕らは美味しいものにありつけてるのだから。

 僕はテンションが上がる。なんて言っても、僕の今までの人生でカニという高級食材を口にした事は数える程しかない。


 海の中に戻ろうとするが、大きな波に攫われそうになりついマイにしがみ付く。うっ、柔らかい。

 収まり離れるがなんか、意識して緊張してしまう。マイの手がドクドクしているような気がする。もしかしたら僕の脈打かもしれない。


「マイ、行こっか」


「うん……」


 なんか変な空気になってしまった。


 僕たちは手を繋いだまま、斧を手に、重しにして、水の中を降りて行く。


 ん、なんかでっかいものが見える。


 ドラゴン?


 よく見ると片方の角が折れたドラゴンは何かをバリバリ噛んでいる。


 何かが流れて来る。ハサミ?

 

 マイの握る手が強くなる。マイも気付いたか。


 僕達のカニさんは、食いしん坊ドラゴンの胃袋に収まったみたいだ……


 …………コロス…………


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