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 水中呼吸の魔法


 抜けるような雲1つない青い空。


 日の光を照り返しキラキラしている白い砂浜。


 透き通った海から絶え間なく打ち寄せる波。


 僕はビーチパラソルの下、リクライニングのビーチチェアを倒して横たわりサングラスをかけて辺りを眺めている。2つ目のサングラスも破壊されたので、あと残り1つしかない。


 泳いでいる連中を見ててある事に気づく。戦士のデュパン、黒マッチョのレリーフと見た目幼女の魔道都市の導師ジブルが泳いでいるのが見えるのだが、ジブル、息してなくね?

 彼女はめっちゃ長い間潜ってからひょいっと水面に顔を出すのだが、その潜っている時間は、明らかに人種が息を止めていられる時間を凌駕している。


 魔法チートつかってるな!


 多分水中呼吸の魔法だろう。なんかの文献で見た事がある。


 ジブルが海から上がって来る。赤いストライプのしゃれたワンピースタイプの水着を着ている。見た目幼女なのにけしからん事に結構胸が大きい。サングラスのおかげで視線を悟られないのは素晴らしい。最もジブルは射程圏外だが。


「ジブル、俺にもその魔法をかけてくれ」


「え、ザップ、何の事ですか?」


 悲しい事に海に来てから僕の地位はかなり落ちた。女子の僕の呼び方が軒並み呼び捨てに変わった。まあ、親しくなったと好感的に捉えておく事にする。少しイラッとするが。


「水中呼吸の魔法使ってるだろ、そうだな、今度なんかお前のいう事聞いてやるからさ」


「言う事……聞いてくれる……」


 ジブルの目が妖しく光る。こいつ、何考えてやがる? 相変わらず、危険な生き物だな……


「まあ、良識の範囲だがな」


「しょうがないですね、そこで目を瞑って力を抜いて、この魔法は触れないといけないから我慢して下さい」


「分かった。たのむ」


 僕は言われた通りに力を抜いて目を瞑る。


「いただきますです!」


 ん、何をいただく気だよ。


 ぴとっ。


 僕の胸にひんやりとした小さな手が触れる。よりにもよってそんなとこ触んなよ、痴女か?


 ジブルの手から何か暖かいものが流れて来るような感覚がする。


「開けていいですよ!」


 僕が目を開けると、そこには絶世の美少女が!


「な、なんて綺麗なんだジブル……もう、我慢出来ない」


 僕は自分の心には逆らえず、ついジブルを抱き上げる。まるで子供を抱き上げたようにとても軽い。


 僕は僕の最愛の女性、ジブルを見つめる。ジブルも僕を見つめている。今僕の目にはジブル、ジブルの目には僕しか映っていない。ジブルの頬にパッと朱がさす。なんて可愛いんだろう……


「ジブル、2人で遠くの楽園に行こう!」


「はい! ザップ……」


 ジブルはキラキラとした目で僕を見るとゆっくり頷く。


 そして僕は焼けた砂浜を歩き始めた。


「まてーい!」


 ん、マイの声?


 ばこーん!


 頭になんか固いものが当たった。僕はジブルを投げ出してしまう。


「あちちちちちっ!」


 焼けた砂の上でジブルがのたうちまわっている。


 ん、僕は何してたんだ?


 なんかジブルがめっちゃ可愛く見えて……


「ザップ、大丈夫? 危なかったわね、『魅了チャーム』の魔法よ! ルルが気づかなかったらどんな目にあってた事か……」


「チッ、あともう少しだったのに……もう、痛いし熱いし最悪です……」


「最悪はお前だよ、何してやがるんだ。次はちゃんとした魔法かけてくれ」


「分かったわ、はい」


 ジブルが僕の胸をまたペタッと触る。


「あとは水に入ったら、息を吸うように水を吸って下さい」


 ジブルの手から暖かいものが流れてくる。


「よし、いくぜ!」


 僕は海に向かって走り出す。


 これで僕も水中呼吸できるはず。かなづちとはおさらばだ!


「ヒャッホーッ!」


 魂の叫びを上げ、僕は渾身の跳躍で海に飛び込んで思いっきり海水を吸う。


 ごぼぼぼぼぼぼぼっ!


 何っ、息が出来ない。いかん突っ込み過ぎた。足がつかない……


「ごぼっ! ごぼっ!」


 僕は塩っからい水を吐き出した。さっきジブルは僕に水中呼吸の魔法をかけたフリしただけだったのか。


 目の前にはまたマイの顔。


 溺れるの、3度目か……


「ザップ、大丈夫? ジブルは逃げたわよ」


 導師ジブル!


 絶対、泣かしてやる!!!

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