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 ウォーターメロンクラッシュ


「ザップ、久しぶりにわたしと勝負しろ!」


 僕の前に再び北の魔王リナ・アシュガルドが仁王立ちしている。一人称が『わたし』になっている。マイの良識教育がすこしづつものになってきてるな。

 そう言えば、さっきもそんな事言ってたな。


「勝負って何するんだ? 今日は色々疲れたから、争い事は勘弁してくれ」


 僕はブラッディーマリーを手にする。ブラッディーマリー、ウォッカをトマトジュースで割った、大人の男のカクテルで、マドラー代わりにセロリが刺さっている。僕はそれにさらに黒胡椒と塩を振りかけた。セロリで赤い液体をかき混ぜて口に含む。このスパイシーとドライな感じが僕は好きなのだが、マイやアンはゲテモノを見るような目で見てる。


「ザップ、なんだそのけったいな飲み物は?」


「ブラッディーマリーだ。トマトジュースのカクテルだ」


「トマトジュース……よくそんなもの飲めるな…」


 リナはしげしげと僕のグラスを眺める。見た目通りリナはお子様舌みたいだな。


「それはそうと、私が行った異世界では、海でやる修行のうちにウォーターメロンクラッシュなるものがあった。どういうものかと言うと、ビーチにウォーターメロンという大きな実をおいて目隠しして叩くというものだ」


 大きな実を叩く?


 僕はつい横で寝転がって日光浴をしているルルとミカに目がいってしまう。4つの大きな実が転がっている。それを目隠ししてやって叩く? うん、海にふさわしい刺激的な勝負? だな。


「まて、ザップ、貴様また不埒な事を考えておるだろう」


 それからリナが詳しく説明する。プレイヤーに目隠ししてクルクル回して方向感覚を失わせたあと、地面に置いたウォーターメロンと言う縦縞の大きな実を周りの声を頼りに木刀で叩くというものだ。目が見えない中で戦うための修行法ではないかとリナは言っていた。


「多分、今ザップが考えてる、そのゲームで起こりうる、ウォーターメロンじゃなくて人を叩くとか、思いっきり叩いてウォーターメロンを爆砕するというボケは即座に負けという事にしましょう」


 いつのまにか僕の後ろに立っていた。マイがルールの補足をする。なんて厳しいんだろう。僕がやろうと思っていた事が封じられた……


 地面にウォーターメロンというでっかい瓜みたいなものが置かれ、僕とリナはそれから結構離れた所で目隠しする。その場でクルクル回されて僕は闇の中木刀を振り上げる。


「ザップ、右、右!」


 皆が思い思いに僕とリナに声をかけるが、僕はマイの言葉を信じる事にした。マイの言う通りの方向を向き言われた通りに歩を進める。


「…………っ!」


 急に進んでいた僕の足が空をかく。何も無い。僕は手を振り回すが何もない。


 ザバーン!

 

 僕は水の中に落ちた。深くなく落ちた衝撃を和らげるものだったと気づく。目隠しを取ると僕は穴の底にいた。まさか、マイが僕をたばかるとは……やられた……これは多分全員グルだな。


「大成功! ザップ、ビックリしたー?」


 マイを始め、穴の上から皆が覗きこんでいる。


 プチッ!


 頭の中の何かが切れた。


「キャッ!」


 マイが体を隠してうずくまる。マイの水着は僕の収納の中だ。僕以外が収納を使えないように一時的に管理者権限を止める。


「お仕置きだな。おまえら全員ひん剥いてやる!」


 かくしてビーチに魔王が降臨した。


 

 ザップ、楽しそうですね2022.6.14

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