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 魔王の一人称


「ザップ! 久々にわらわと勝負しろ!」


 僕の前に北の魔王リナ・アシュガルドが仁王立ちしている。金色のツインテールに金色のビキニアーマー、これがデフォルトな格好だけど、今だけはここはビーチ故にあんまり違和感がない。

 今の僕はサングラスと言うマジックアイテム並みに素晴らしいものを装備しているので、ビーチチェアから身を起こすと、いつもは恥ずかしくて凝視に堪えないリナを観察してみる。

 いつも露出過多なはずなのにその体は白く、まだ成長期なのか手足が若干長い気がする。胸は他の皆に比べて若干小振りだがもしかしたらビキニアーマーのブラジャーに押し潰されているだけかもしれない。なんか少女っぽくて僕的には素晴らしいと思う。顔は小さくまるで人形のように整っていて目が大きいので幼く見える。性格が残念じゃなかったらとても可愛いと思う。


「お前さ、その『わらわ』っていうの何とかならんのか?」


 その一人称はとても残念臭を放ちまくっている。もう少し普通になろうよ。


「ザップ、わらわは『魔王』を継承した。わが国では『魔王』は自分の事を女なら『わらわ』男なら『ちん』と呼ばねばならんのだよ」


「そいつは、いかんな!今、世界では王国を含め、『男女平等』というものを掲げている。そんなんじゃ魔国は他の国から遅れてるとおもわれるぞ。そうだ、一人称を、今日から一緒にしろ、お前は今日から自分の事を『ちん』と呼んでみろ、男女平等だ、はい練習」


ちん……」


 リナは伏し目がちで消え入るような声を出す。顔を含め全身がぱっとピンク色に染まる。なんと、頭の中が狂戦士のリナが恥じらっているのか? フッ、魔王と言えどまだガキだな、こいつにはいつも振り回されてるのでとことんまでいってやる!


「ん、声が小さいな、魔王って国の代表なんだろ? アシュガルドってそんなものなのか?」


「朕!」


「お、よくなってきたな、もう一回だ!」


「朕!」


 もうリナは茹で蛸のように真っ赤だ。


 今日の僕は一味違う。衆人環視の中、羞恥プレイでしかない子供が受けるような水泳講習のおかげで一皮剥けた。


 すぱーん!


 僕の頭が揺れる。何かで叩かれたみたいだ。大事なサングラスが宙を舞う。僕は無心で飛び出しサングラスを優しくキャッチしてクルンと焼けた砂原で1回転する。


「誰だ!」


 全く気配を感じなかった!


「ザップー! いい加減にしなさい!」


 マイだ顔は笑っているけど、目が笑ってない。


「海の深い所に放り込むわよ」


「ごめんなさい」


 即座に頭を下げる。マイとリナが協力したら間違いなく僕は海に放り込むまれる。流石に1日3回も塩っぱい水を満喫したくない。


「リナちゃん、あたしたち仲間でしょ、ここでは自分の事、好きなように呼んでいいのよ」


「ありがとう、マイ、そうするよ。偉大な父に近づくために、わらわは、いや朕、朕と呼ぶことにするぞ!」


 やっぱり、リナの頭の中は魔境だ。さっき見せた恥じらいはもうどっかに飛んでいったのだろう。真夏の蜃気楼だな。


「朕、朕はだめーっ!」


 マイの声が響く。


 そりゃそうだろう。いくらビーチでも公共の場所で『朕朕』はだめだろう。人として。もはや一人称の枠を超えてただの下ネタだ。


 しばらく辺りは波の音しかしなかった。


 遠くで泳いでいた連中も止めてこっちを見ている。


 次はマイが茹でだこになった。


 自爆だ。


 僕は何もしてない。僕は立ち上がりサングラスをかけて再びビーチチェアに横になる。

 海というものは人を解放的にするものだな。


 

 ひっでー話しです。疲れてたんでしょうね。2022.6.14

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