海海
ビーチ、それはまごうことなきこの世の楽園。
僕の目の前では、見目麗しい乙女達が、体を最小限の布地を纏い、打ち寄せる波と戯れている。
マーメイド。
その言葉が頭をよぎる。そうだ、まるで波打ち際の妖精みたいだ。
マーメイド。
よく見れば本物も混じっている。貝殻のブラジャーだけで泳いでいる。あれって人間で言うと下半身丸出しのようなもんだよな? 恥ずかしくはないのか?
ときたま『バシャーッ』と大きな音をたてて海面からジャンプする。
ずれろ!
そう僕は心の底から念じるが貝殻はついたままだ。もしかして貝は生きていて岩にしがみつくようにひっついてるのか? まあ、多分何らかの魔法のアイテムなんだろうけど。つまんないな。ポータルを放って貝殻を回収してやろうかと思ったが、間違いなく女性全員に袋だたきされそうなんでやめとこう。一瞬、女性全員を敵に回して勝てるかどうか算段したが、マイとリナを同時に相手にする時点で勝算は低いだろう。
ポータルに収納するのはNGなら、ポータルから出すのはオッケーだろう。
ターゲットは誰にするか?
僕は1人1人じっくり凝視する。顔は動かさず目だけで追っているので誰も何を見ているか分からないはずだ。
戦士のアンジュと野伏のデルはなんか大きいボールを打ち合っている。アンジュの健康的な体、意外に胸が大きい、赤い髪に合わせてか赤いセパレートの水着だ。デルのすらっとした手足も素晴らしい。白い素肌に黒いビキニが大人っぽい。胸は小振りだが、ウェストはシュッとしまっていて素晴らしいプロポーションだ。決して僕は胸ばかり見ようと思っている訳ではないが、どうしてもぷりんぷりん揺れているのを見ると目が釘付けになってしまう。
ラパンとシャリーはテーブルについてなんか青い飲み物を飲んでいる。ラパンは白のワンピース、シャリーは水色のワンピースを着ている。やたらフリフリがついていて可愛らしい。正直、ラパンを見ても何も思わない。しばらく僕はラパンだった訳だし、なんか、いまだに自分を見てるみたいだ。それにしてもシャリーは凄い。まだ幼いのに立派な胸部装甲を誇示している。けど、僕的には非合法の範囲なのであまり見ない事にする。
そして遠くでは一心不乱に魔王リナが泳いでいる。いつもと同じ金色のビキニアーマーなのでなんの感慨もない。強いていえば、強い光の下のゴールドは目が痛い。サングラス越しでも。
そして僕の隣のパラソルの下には化け物達が横になっている。ビーチチェアを倒して、魔法使いのルルはなんか本を読んでいて、神官戦士のミカは寝息をたてている。横になっているのでよく分かる。そのデカさが。ルルは紫色のビキニ、ミカは白色のビキニだ。微かにルルの方がデカイが、2人ともなんて言うか子供の頭位あるのではないだろうか?
そして僕の横には聖戦士のジニーが寝ている。ピンクのパンツとチューブトップブラでしかも胸元がハートの形に空いている。清純そうな容姿なのに、なんていうか1番刺激的だ。
デュパンとレリーフ? そんな者はいない。遠くで泳いでいる気持ち悪い生き物は見なかった事にする。特にレリーフ。ブーメランパンツは目の毒でしかない。
そして、僕はまたマイとアンに目を向ける。2人は腰くらいまで水に浸かって水の掛け合いをしている。
ターゲットロックオン!
僕は寝たふりをしながら海の中にポータルを1つ放つ。縦にしているので上からは見えないはずだ。
「…………」
急にマイが動きを止めて赤くなる。
「マイ姉様? どうしたんですか?」
「え、な、なんかね……」
「なんですか?」
「何か足の間が暖かいような…」
「え、もしかして漏らしちゃったんですかぁー!」
アンが大声で叫ぶ。マイはもはや茹でだこみたいに真っ赤だ。回りのみんながマイを見る。マイはマイなのにもじもじしている。
「そ、そんな訳ないでしょ……」
マイは絞り出すように声を出す。
うん、当然そんな訳ない。でも水着姿で恥じらうマイは可愛いらしい。
よきかな! よきかな!
僕はマイのお尻辺りでポータルから温泉のお湯を出してみた。まさかここまで上手くも行くとは。僕はポータルを砂の中に隠す。こういうのは味を占めて何回もやるとばれるものだ。
次はどんな悪戯をしようか?
僕は抜けるような青空の下、ビーチチェアの上でほくそ笑んだ。