ミノ剥きと言う名の拷問
僕の目の前でマイがホルモンを切っている。なんか長い腸的なものをどんどん一口サイズにぶった切っている。それにしてもマイは凄い、ドラゴンの化身のヘタレのアンや聖戦士のジニーなどは『キャーキャー』言ったあと、恐れをなして遠くで野菜等を切っている。
今日はこの後バーベキューで、その仕込み中だ。
「ザップ、手が空いてるならミノを剥いて」
ん、ミノを剥く?
「ミノタウロスを剥くのか?」
「ザップ、何ふざけてるのミノタウロスじゃなくてミノよミノ、牛の胃よ」
そう言うとマイは収納から奇妙な物体を出した。
それは、なんと言うか茶色と灰色の中間のような濡れたモフモフの動物みたいなもので、なんか変な刺激的な臭いがする。
「それ、なんですか? ゴリラの頭の皮ですか?」
いつの間にかアンが来てその奇妙な物体をを覗きこんでる。
「うん、ゴリラの頭みたいにも見えるな。俺的には濡れた子犬に見えるな」
これがミノ? 僕が知ってるミノはピンクがかった肌色のつやつやした肉で、コリコリして美味しいもののはずだが。
「これがどうやったら、いつものミノになるんだ?」
「皮を剥くのよ。皮の方を布で押さえてまずはヘリの所に指を入れてそこから剥いていくの」
マイはそう言うと、布を出して、その奇妙な物体を手にしてふちの所を指でコリコリし始めた。
「んー、剥きにくい奴に当たったわ、もうっ、入らないーっ!」
マイは顔を赤くしながら、ミノを少しづつ回していく。
「入った!」
見ると、ヘリの部分が少しむけている。
「あとは、皮を布でつかんで、身を引っ張って少しづつ剥いていって。欲張ると皮が千切れるから」
そう言うと、マイはまたホルモンのカットに戻っていった。
僕は言われた通りに皮と身を引っ張ってみる。
ぶちっ!
途端に皮は千切れてしまう。
「あーあ、ご主人様、千切れてしまったっすね」
「おい、それならお前やってみろ」
「それくらい簡単ですよ」
アンはミノを手にして、僕が千切れた所の隣から向き始めた。
ぶちっ!
果たしてすぐに千切れた。
「私には向いてないみたいですね。ではまたー」
アンは僕にミノを押し付けると逃げて行った。
「ザップ、それなら、皮と身の間に指を押し込んでいくみたいにやってみて」
マイに言われた通りにやってみる。皮が滑って力が入らない。布で押さえると布の抵抗で掴みやすい。さっきよりは上手く行ってるけど、少しづつしか剥けない。少し頑張ってみると、ずるっと大きく剥けた。チャンス! 僕は一気に剥いてやろうとする。
びちっ!
うう、破けた。
試行錯誤しながら剥いた所、いつの間にか1時間位たっていた。使ってない筋肉を使ったのかなんか首が痛い。
けど、今僕の前にはピンクでつるんとした綺麗なミノがいる。なんか少し愛着が湧いた。
僕は焼き肉屋さんのミノの値段が高い事に納得した。そのあと、美味しくいただいた。