炭酸水
セミ君をひっつけた木の所に行ったけど、落ちて死んでたりはしなかったのでほっとしました。生まれて始めてセミの幼虫?を触りました。
最近暑くなり、僕達は貧乏になった。
お金は出て行くのに稼ぐのが追いついていない。
その1番の理由を僕は見る。
朝、導師ジブルが出勤前に出してくれた大っきい氷、支払い金額銀貨3枚に薄着で抱きついている女子約2名。完全ニートだ。
なぜ約2名かと言うと、マイとダメドラゴンの傍らにはホルスタイン柄の猫のモフちゃんもいる。
あんなに可愛くて、モフモフの誘惑をしてきたモフちゃんも、夏だけはただの毛玉だ。正直寄って来ないでほしい。暑さに拍車がかかる。
朝の日課の素振りを終えて、水風呂に入った後、マイとアンは氷の一部と化している。今年は一段と暑い。獣人のマイは暑さに弱いらしく、もはや使い物にならない。水着を着て氷にしがみつくだけの生き物と化している。まあ、眼福ではあるのだが……
それにつけてもドラゴンの化身であるアンはひどい。冬は『寒いの苦手なんですぅ』とかほざいて、ほぼ炬燵の中で生活していたし、夏になったら夏で、『暑いの苦手なんですぅ』とか言って氷にべったりだ。
ドラゴンって何なんだ? 暑さ寒さに弱く、人間の数倍飯を食う。なんて言うか、いつどこで活躍するんだ?
デカイ、火を吹く、頑丈。戦闘以外ではなんの役にたつんだ?
また、尻尾をぶった切って食料として売って商売する事を考えるが、そう上手い話はない。尻尾をぶった切ったあとにエリクサーをかけても生えてくるのは縦に扁平な細い尻尾で、臭くて固く食料にはならない。美味しい普通の尻尾になるには1年位かかるそうだ。まだ、前切ってから数ヶ月しか経ってないので、収穫はまだ先の話だ。
「ただいまーっ!」
甲高い声が玄関からする。暑いとその高い声は少しイラッとする。
「「「おかえりー……」」」
家で1番の働き者に僕達は挨拶する。
魔道都市での仕事を終えた、導師ジブルだ。ジブルはテーブルにグラスを置くと、なんかごにょごにょ言う。すると、グラスの中に氷が発生する。
シュポン!
ジブルはコルク栓のついたビンのコルクを抜く、高い心地よい音がする。グラスにレモンを絞り入れると、酒っぽいものを入れて、ビンに入っていた液体を入れる。そしてマドラーでそれを混ぜると、グラスに口を付ける。
「ぷぱーっ!」
グラスから口を離すと、ジブルは恍惚の表情を浮かべる。
「おいジブル、それはなんだ?」
「ん、レモンチューハイよ! いま流行の」
グラスには水滴が結露しとっても冷たくて美味しそうに見える。
僕の視線を感じてか、ジブルはグラスを抱える。
ぐびっ! ぐぴっ!
「ぷはーっ! さいこう!」
くそっ、横取りしようとしたのに、先を越された!
「何が入ってるんだ?」
「お酒と、レモンと、炭酸水よ」
「その炭酸水ってまだあるのか?」
「残念、もうないわ、これって超高いのよ」
炭酸水ってのは聞いた事がある。エールみたいにしゅわしゅわした水だ。氷が入ったそれを飲むだけでなんか涼しそうだ。
「ザップさん、そう言えば湧き水で炭酸水が湧いてる井戸があるって聞いた事があるわ」
「なんだと! それは何処だ」
僕はその場所を聞くと全力で走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何時間走ったのだろうか、暑い中朦朧としながら僕は走り続けた。ただ、炭酸水を飲んで一時期の涼を得るために。その為に流した汗は止めどない。
涼しい山の中、その目的の井戸はあった。かなりの山奥で僕しかいない。つるべを落として引き上げた水を飲む。すこし癖があるが氷無しでも冷たくしゅわしゅわだ。
「おい、リナ、ここと俺の家とワープポータルでつないでくれ」
僕はスマホでリナと通話する。
「まあ、いいが、無料ではないぞ、しっかりお金はもらうからな」
「ああ、大丈夫だ」
斯くして、僕はさらに貧乏になった。
チーン!
「「「かんぱーい!」」」
僕達はその井戸の脇にテーブルを出して、シロップとレモンを炭酸水で割った物で乾杯する。辺りも涼しく、レモン水も冷たくスカッとしていて最高だ!
リナにポータルをつないで貰ったので何時でも来られる。明日からしっかり働こうと皆で誓った。
今日は『のか』先生の『忍者と司教の再出発!』という作品を読んでます。やっぱり迷宮探索はいいものですね、忍者さんと司教さんのやり取りが楽しいです。
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