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第四話 荷物持ち戦う


「やった! 生きてる! 生き延びた! ヒャハハハハッ!」




 僕はエリクサーの部屋に戻ると、真っ先に泉に飛び込んだ。


 生きてる事を実感して、涙を流しながら笑った。

 

 大して事態は好転してないが、いやむしろ悪くなったかもしれないけど、生還した喜びをかみしめた。


 もうここから出たくないが、文字通り僕は何一つ持ってない。エリクサーを飲む事で喉を潤す事はできるが、食べ物をどうにかしないと近いうちに餓死してしまうだろう。


 泉で体の汚れを落とし、そこから出る。意を決し、今度は先ほどと逆の扉を開ける。  

 こちらもさっきと同様に壁に自動で火が付く燭台がある。違いは通路が前より狭い。今度はすぐに突き当たり扉に阻まれる。

 躊躇する事なく扉を開ける。また広間だけど、今度は左右の遠くに壁が見える。正面は遠くに篝火が微かに見える。部屋の中はかなり薄暗く、一定間隔おきに石の柱が立っていて、床は石畳だ。なんか昔からある寺院の中みたいだ。

 僕は正面を進むのは止めて、左手の壁沿いに進む事にした。



 フゥーッ……フゥーッ……



 幻聴かもしれないが、何かの呼吸音がするような気がする。

 僕は出来るだけ音を立てないようにしながら、左手を壁にあてて右に篝火を見ながら前に進む。


 やはり何かがいる。


 遠くに見える小さな光がたまに見えなくなる事があるからだ。目を凝らして見ても何かわからない。



 ダッダッダッダッ。



 何かが走ってくると思った時には、既に僕はふっとんでいた。口から暖かいものが溢れる。立ち上がれない。一発で骨を何本かもっていかれたみたいだ。

 大丈夫だ一撃で死なない限りエリクサーがある。収納からエリクサーを出して体にかける。即座に痛みが引く。すぐに立ち上がり僕を攻撃した者を見る。


 巨大な影が近づいてくる……


 はち切れんばかりに発達した筋肉に覆われた人間の体に牛の頭がのっている。


 ミノタウロスだ……


 最悪だ。ゴールデンウィンドのメンバー達といた階層にはいなかった怪物だ。聞いた事がある。このダンジョンの最下層にミノタウロスが生息すると……

 ミノタウロスは上級クラスの冒険者でも倒せるか解らないような化け物だ。僕は絶望に包まれる。しかもそれならば、落ちてきたのは最下層だったのかと……


 ミノタウロスはじりじりと近づいてくる。手には巨大なハンマーを持っている。


 終わった……


 何度エリクサーで回復しても倒せる気がしない。僕のスキルは収納のみ。生き物は収納に入れる事は出来ない。昔、昆虫で試してみたけど駄目だった。今の僕の持ち物は収納に入れたエリクサーとドラゴンブレスだけだ。


 ミノタウロスはハンマーを振り上げて走ってくる。あれが振り下ろされたら多分即死だ。駄目もとで、収納からドラゴンブレスを出してみる。入れた方向と反対に向けるようにイメージして……



 ゴウッ!!



 出来るだけ遠くで出すために突き出した右手から炎が出る。


 一瞬にしてミノタウロスは燃え尽きる。


 そのあとには、その手にあったハンマーだけが、ただ煙を上げて残っていた。


 読んでいただきありがとうございます。なんとか窮地を逃れ、これから長い旅の始まりです。

 少しでもお気に召されたら、すぐに読んだ所を開けて便利ですので、ぜひ、『小説家になろう』さんにログインして頂いて『ブックマーク』をお願いできたら有難いです。



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