荷物持ち無様に敗れる
「せっかくですので、今日は他の技も教えようと思います」
デル先生が手をパンパンして、僕達はそっちを注目する。この場においてはデルは先生で僕達は生徒なので、上下関係は逆転してる。
「急所に一撃を加える技の名前は点穴といいまして、その急所は人体にある経絡と言われる流れに沿って存在しています。経絡秘孔とも呼ばれてます。聞いた所によると、魔王のリナさんが行った異世界ではその経絡秘孔を突いて一撃で人を倒す格闘技の話がかつて流行ったそうです。指先1つでバッサバッサと人をなぎ倒していく。格好いいですよね。まあ、そこまでではないですが、さっきの技も含め似たような感じではありますよね」
そう言うと、デルは素晴らしい笑顔を浮かべた。
こいつ間違いなく真正のドSだな。人を倒すという事でここまで素晴らしい笑顔を浮かべられるとは…
「ではザップ兄様、ここに1つテーブルを出して貰っていいですか」
僕は言われた通りにテーブルを出す。何をする気だろう。
「ザップ兄様、今から私と腕相撲して下さい。全力でいいですよ」
え、何言ってんだ?全力?腕折れてもしらないぞ?
僕は訝しがりながらも準備する。僕とデルはテーブルに肘をつきお互いの手を握る。以外に柔らかくてドキッとする。それになんて綺麗な手だろう。指がシュッと伸びていて、しっかり切ってるのに爪は長い。貝殻みたいな爪で指が短い僕とは大違いだ。エルフって手も綺麗なんだな。
「では、いいですか」
アンがレフェリーで僕達の手の上に手を重ねる。
「レディ!ゴー!」
アンが手を上げる。
「…………ッ!」
途端に僕の親指の付け根に激痛が走る。
ドゴン!
次の瞬間には僕の腕はテーブルに叩きつけられたのみならず、テーブルは二つに割れて僕はその勢いで宙を舞った。一瞬何が起こったのか訳がわからなかった。
僕は立ち上がるが、他のみんなも呆気にとられている。
「おいおい、それって反則じゃないか?」
僕はデルに食ってかかる。
「ザップ兄様すみません、私では真っ向に勝負したら勝負にはなりません。けど、上手くやったら力の差が甚だしくても勝つ事が出来るというのは解っていただけたのではないでしょうか?」
まぁ、そうだな。
「それで、何をしたの?」
マイがデルに尋ねる。
「手のひらの親指と人差し指の間の合谷という急所を潰させていただきました」
僕は手を押さえる。少し時間がたったのに手は痺れている。
「ここは、すこし押さえる分には痛み止めのツボですが、強く押さえたり叩いたりすると、しばらく物を握れなくなります」
現に僕は今も握力がない。エリクサーを出して治療したが、僕は経絡秘孔の恐ろしさを思い知った。
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