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 荷物持ちは弱くなりたい


「どうえぃっさぁー!」


 浅黒い肌の巨漢、もとダークエルフのレリーフは僕の右手をとって背負い投げにもってこうとする。


 甘いな!


 僕は空いている左手でレリーフの腰を押してやる。レリーフは僕を背負うために回って僕に背中をつけようとするが、僕がその回転に力を加えたことで回り過ぎてバランスを崩す。そこで強引に掴まれた右手に力をいれレリーフの首に腕を引っ掛けて回って腰を入れて投げ飛ばす。


『腰送り』からの『首投げ』。


 背負い投げという大技は、相手が殴りかかってきた力を利用して投げるか、みぞおちとかの急所に一撃与えて相手が怯んだ瞬間に投げたりしないとまず決まらない。相手に背中を密着させる系の技は回って押し当ててきた背中を今みたいに送ってやるか、向けて来た無防備な後頭部に頭突きで一撃与えてやるだけで簡単に技を潰してダメージも与える事が出来る。要は実戦で使うには必要な条件が多いと言う事だ。

 まあ、デルから教えてもらわなかったら今も見事に大地に叩きつけられてたと思うが。


「やっぱザップさんは強いですね、元々の腕力にも差がありすぎますが」


 レリーフが頭を振って立ち上がる。正直レリーフ程度だったらどんな技をかけてきたとしても、ことごとく腕力のみでつぶす事が出来る。それに相手がデルだったとしてもほぼ力で押し切ることが出来る。


「いかんな…」


「どうされました?」


「力で解決してたら、俺は技が上達しなさそうだ」


「そうですね」


 レリーフは腕を組んで考える。


「迷宮でたまに手に入る強力な呪具に初心者シリーズというのがありまして、つけた者のレベルが初心者にもどるそうです」


「いいな、それ」


 そいつは素晴らしい。家の隣にはほとんどの呪いを解く事ができる、元大神官のシャリーもいる事だし、試してみるのも悪く無い。それがあれば目いっぱい出来そうだ。正直手加減し続けるのは辛いものだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「こんなもの欲しがる人初めてですね」


 見た目幼女の導師ジブルが僕に指輪を差し出す。僕はそれを受け取り指にはめようとする。


「あーっ!何、ジブル、ザップに婚約指輪渡そうとしてるのよ!」


 マイがすごい剣幕で走り寄って来る。速い!一瞬消えたかと思った。


「おいおい、これは呪いの指輪だ」


 僕はマイにねじくれた髑髏の彫ってある指輪を見せる。


「こんな趣味の悪い婚約指輪渡す人いねーだろ」


「え、めっちゃジブルが好きそうなのじゃない?呪いって恋の呪い?」


「マイ、婚約指輪から離れようか。初心者の指輪ってやつだ。これをはめたら初心者に戻れるそうだ」


「恋愛の初心者ですか?ご主人様は今でも十分恋愛の初心者ですよ」


 ドラゴンの化身アンがひょこっと現れる。


「お前には言われたくないわ、ほっとけ!」


 食いしん坊ドラゴンにだけは色恋についてとやかく言われたくないな。


 僕はとりあえず指差をはめてみる。


 ぼふっ!


 はめた瞬間、指輪は煙を上げて爆発して、後には黒い煤のみが残った。僕のレベルを下げるには力不足だったみたいだ。


「燃え尽きるような恋でしたね」


 アンが変な事言ってるがいい加減恋愛ネタから離れてほしいものだ…


 ああ、弱くなって思いっきり格闘練習したかった…


 


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