第三十九話 荷物持ち再び下層へ
僕は道を戻り、39層の安全地帯で一人で肉を食べる。マイが仕込んでくれた肉なのにあまり美味しく感じない。
44層までの魔物はそろそろ発生するはずなので、少し寝た後に進む事にする。
45層から48層のヘルハウンドは狩り尽くしたのでしばらくは出ないはずだ。
次の49層のミノタウロスはもうじき発生すると思われるので、リザードマンを狩った後ミノタウロスと戦う事にする。
僕は自然に目が覚めるまでじっくり寝たあと先に進んだ。太陽に当たらない日々なので、今の日付も時間も解らない。日の光が恋しいが、それはもっと強くなった後だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どういう事だ……」
つい言葉が口から漏れる。
僕の目の前にはリザードマンの死骸がある。一刀の下に袈裟懸けに切り裂かれている。
おかしい、だれかこの迷宮にいるのか? リザードマンを一太刀で倒すとはかなりの手練れだ。
僕は警戒して先に進む。
次は三体のリザードマンが一撃で倒されている。あらためて見るが全てのリザードマンは致命傷の傷が一つづつしか無い。
よく考えてみる。多分熟練の冒険者のパーティーがここに入り込んでいるのだろう。けど、そんな強力なパーティーは聞いた事がない。直接攻撃のみでしかも一撃でリザードマンを倒している。正直、前衛がそのレベルのパーティーと戦って勝てる自信はない。
引き返すか?
いや、人間なら出会ってすぐ戦闘にはならないだろう。少しは会話になるはずだ。もしもの時にはすぐに逃げればいい。僕の頭には、この先の全ての地形が頭に入っている。問題ないはずだ。
それから先も、全ての部屋の全てのリザードマンは一刀で倒されていた。
強すぎるだろう!
正直どんな者がこんなことが出来るのか興味がわいてきた。
全ての部屋をまわっても何とも遭遇せず、45層にたどり着いた。ここから先は魔物がしばらく出ない。
最短距離で49層に向かうことにする。何者かは解らないが、ミノタウロスまで横取りされたら困る!
一応警戒しながらどんどん下層へと降りていく。
次は49層だ。僕は階段を降りていく。
降りるにしたがって、とてもいい匂いがする。何かを煮こんでいる匂いだ。
この先に誰かいる。僕はハンマーを構え物音を立てないように慎重に階段を降りる。
階段を降りきると、そこには見慣れた二人が……
「ザップ、遅いじゃない! 待ちくたびれたわ、はい、どうぞ」
「ご主人様、待ちくたびれましたよ」
僕はマイが差し出したカップを受け取る。
何だ? 何で二人がここにいる?
訳が解らないまま、僕はカップを口にした。懐かしい味、最高のスープだ。