またまた格闘術
「今日はデルの格闘技講座に新しいお友達、まあ、実際は実験台の元ダークエルフのレリーフ君が加わりましたーっ!」
道着を着込んでいるエルフの麗人デルが1人の男性を紹介する。
新進気鋭の王都の冒険者パーティー『地獄の愚者』の一員のダークエルフの魔法使い?のレリーフだ。
だいだい週に1回僕達はデルに彼女が得意な格闘技を習っているのだけど、今までは男は僕1人だけで、僕が延々と技をくらい続けるという、若干ストレスを感じるものだった。
けれど本日、新たな実験台が来たお陰でそれは卒業出来そうだ。
僕はレリーフを見る。タンクトップから朝黒い丸太のような腕が覗き、恐ろしいくらいに発達した大胸筋が服の上からもよくわかる。銀色の髪は短く刈り上げていて、その顔の口元にはマッスル筋がついている。なんで、マッチョな方って口角の所にぷくっとマッスル筋がついているのだろうか?
それはおいといて、確か会ったばかりの頃のレリーフはガリガリで、歩いているだけで貧血起こすような奴だった。僕が抱えて運んでやったのを思い出す。めっちゃ軽かった。彼はもともと背は高かったが、それに筋肉がついた事で、今ではオーガやミノルタウロスにしか見えない。
尖った耳があるけれど、誰もエルフ系の種族だとは思わないだろう。
レリーフは僕と目が合うとニヤリと笑う。前は、おどおどしてたのに筋肉がつくと自信もつくものなのか?
「おい、レリーフ、どんだけ強くなったか手合わせしてみないか?」
この魔法使いだった男がどういう戦い方をするのか興味がわいた。
「え、本当ですか、ザップさん、よろしくお願いします。私の死霊魔術を披露しますね」
死霊魔術、アンデッドを使役したりする魔術か。
僕とレリーフは対峙する。
「では行きます」
レリーフは飛びすさると、呪文を唱え、地面から這い出るように一体のスケルトンが現れる。スケルトンウォーリアー、丸い盾と片手剣をもっている。ダークエルフの死霊魔術士。なんか言葉はかっこいい。魔法適性がない僕は少し羨ましい。
「うおおおーっ!」
レリーフは雄叫びを上げると、スケルトンの足を掴んで僕に向かって振り回す。ん、スケルトンウォーリアーは戦わせるためのものではなく、ただのリーチの長い武器だったのか……
軽くぶちのめして、デルを見ると目を逸らされた。レリーフの師匠はやはりデルだったのか……彼女の特技は魔物を捕まえて魔物に投げつける事だからな……
間違いなくレリーフ、魔法の無駄使いだな。だから奴は何も武器をもっていないのか。
そして、そのあと僕達は和気藹々と格闘技の訓練に精を出した。