久し振りの荷物持ち 補足
すみません、忙しかったです(T_T)
僕は久し振りに王都にやって来たので、なんとはなく冒険者ギルドに顔を出した。マイとアンは服を買いに行っている。その待ち時間の暇つぶしだ。顔バレを防ぐために今日もザパンスタイルだ。男女共用のトイレで変身し着替えた。どうもこのスキルはMPをたくさん使うみたいで、1日に2回くらいしか使えない。
もしかしたら自意識過剰なだけかもしれないが、王都ではそこそこ長いこと冒険者をしてたし、『ゴールデン・ウィンド』の勇者アレフとの戦いにはかなりの数の人が見に来ていたので用心にこした事は無いだろう。
僕は昔の定位置の、ギルドで荷物持ちが暗黙の了解で座るテーブルにつきフルーツジュースを頼んで口にする。
今日はもう仕事に出ている者が多く、テーブルの半数以上は空いている。荷物持ちの仕事待ちをしている者も今日はもういない。
冒険者に仕事があるのは冒険者にとっては良いことだと思うが、それだけ王都では荒事が多いという事なのでなんとも言えない。そんな事を考えながら辺りを見渡していると、とある冒険者の一行に目が止まった。
ギルドに入ってから1番右奥のテーブル。かつて『ゴールデン・ウィンド』の定位置だったテーブルだ。そこには4人組のパーティーが座っている。あそこにいるって事は、このギルドでも有数の実力者パーティーなんだろう。やっと『ゴールデン・ウィンド』の後釜になり得る者が生まれたのか。感慨深くそちらを見る。
「おい、姉さん、あいつらには関わらない方がいいぜ、あいつらの名は『地獄の愚者』今ここで評判うなぎ上りのパーティーだ。あいつらはクレイジーだ、あんま見てたら因縁ふっかけられるぜ」
僕のそばを通った情報屋の男が近づいて来て、『地獄の愚者』の方を見ないようにしながら忠告してくれる。
『地獄の愚者』なんかなんとも言えないネーミングだけど、なんか頭にひっかかった。その4人をじっくり見る。
1番奥に座るリーダーと思われる傷だらけの全身鎧の男、大きな角のついたフルフェイスの兜を屋内なのに被っている。
はち切れんばかりの筋肉の浅黒い男。巨大な戦斧を椅子に立てかけている。
楽器を背負った子供と、全身鎧にカイトシールドと片手剣の女性騎士。
ん、吟遊詩人の子供? もしかしてパムか? パーティー変えたのか? 僕はフラフラとそのテーブルに向かう。
「おい、止めときなって」
情報屋が声をかけてくる。けど、僕は進む。
近づくと、リーダーと思われる男がこちらに気づき、跳ね上がるように立ち上がると兜をとる。その顔は見覚えがあった。デュパンだ。へなちょこ剣士だったデュパンだ。けど、今はもう百戦錬磨の古強者みたいだ。立ち居振る舞いに隙が無い。
「ご無沙汰しております。ザッ、いやザパンさん」
その言葉に弾かれるように後の3人も立ち上がり、ほぼ直角くらいに頭を下げた最敬礼を僕に披露する。
「おいおい、勘弁してくれよ、頭を上げてくれ、久し振りだな元気だったか?」
僕の言葉にみんな頭を上げる。
「ザパンさん、おいらも強くなったんだよ」
パムが僕に力こぶを見せる。顔は子供なのに体はガチガチの筋肉質に変わっていた。なんかアンバランスだ。
「ジニーも強くなったみたいだな」
「はい、お陰様で」
ジニーの笑顔は前のままだ。けど、装備から見るに間違いなく人外化してるのだろう。彼女の持ってる盾は見るからにとても分厚く女性が軽々と持てる物には見えない。
「もしかして、お前、レリーフか?」
「はい、前よりも筋肉つきました。筋肉最高ですね」
線が細く女性にも見えたその風貌はもはや面影もなく、そこには浅黒いマッスルがいた。おいおい、変わりすぎだろう。
僕はアンジュにあいつらを鍛えてくれと言ったのを今思い出した。完全に忘れていた。
しばらく僕達は再会を祝して会話に花を咲かせた。ほとんどが地獄のような特訓の話ではあったけど。あ、それで『地獄の愚者』か……
そう言えば、僕はこいつらに馬鹿馬鹿言ったからな。それもネーミングに関わってるのか?
まぁ、全員元気でよかった。けど、やり過ぎだろう。みんな体型変わってるし。もしかして、こいつらドラゴンとか倒せたりするのではないだろうか?
僕と手合わせしたいと言うのを振り切ってギルドを後にした。なんか、脳筋ばかり増えてる気が……
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