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 久し振りの荷物持ち 3


「なあ、あんた本当に人間なのか? 実際は雌ドワーフなんじゃないのか、はぁはぁ」


 僕は、冒険者達の荷物の入ったリュックを前に後ろにサンドイッチマン状態で担いで歩いている。隣ではダークエルフのレリーフが杖をつきつき息もたえだえでほうほうの体で歩いている。もやしっ子か?


 先頭は戦士のデュパンと吟遊詩人のパム、そのあとに荷馬車2台が続き、殿しんがりは、神官のジニーと魔法使いのレリーフだ。


「メスドワーフってお前、やっぱりエルフとドワーフって物語みたいに仲悪いのか?」


「いや、私はドワーフなど気にして無いのだが、何故か知らんがドワーフのメスは私を見ると親の敵でも見つけたかのようにキラキラした目をして群がってくるのだよ。1度はあと少しで拉致される所だった。森から離れ父祖と私は無関係なのだが、やはりこの姿だからかな?」


 ん、なにげに今こいつはイケメン自慢をしているのか? リアクションしにくい奴だな。


「おいおい、今は俺が拉致してやる。そんなノソノソ歩いてもらったら日が暮れてしまう」


「ギャーッ!」


 なんか喚いているが気にせず、ガリガリエルフを肩に担ぐ。うん、やっぱり軽い。


「うわ、ザパンさんって凄いですね。やっぱりドワーフなんじゃないんですか……胸、大っきいですし……」


 神官のジニーが伏し目がちでボクを見てくる。なんかあざといな。天然なのか演技なのか?


「じゃ、それでいいよ、ドワーフでも何でもいいよ」


 そんな感じでワイワイしながら僕達は街道を歩いて行った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「たのもーっ!」


 道の真ん中に僕達の行く手を遮るように、1人の人物が腰に手をあてて仁王立ちにしている。僕はその人物と目を合わせないようにする。


「妾の名は、リナ・アシュガルド、北の大国アシュガルドの君主にして、北の魔王として名を轟かせておる。腕に自信がある者あらばいざ尋常に勝負しろ!」


 金色のビキニアーマーが太陽の光を照らし返している。素肌に金属って大丈夫なのか? 火傷しないのか? もしかして、ずっとここで僕が通るのを待ってたのか? 暇なのか? ツッコミ所満載だが、口にしたら負けだ。


「デュパンさん、絶対あれって関わりあったらアカンやつですよ、目を合わせないようにしましょう」


「ああ、そうだな」


 僕達はそれは見なかった事にして、道をはずして迂回して先に進む。




「さあ、私と歌合戦しましょう!」


 人魚のナディアがフワフワ浮いている。見なかった事にする。




「自由騎士アンジュだ! 勝負しないっすか?」




「魔法少女ルルよ! 魔法合戦しましょうか?」




「私の名前はミカ。神に仕える者だ。お互いに腕を高めあわないか?」




「魔弾の射手デルだ! ダーツで勝負しないか?」




 僕達は一定間隔おきに勝負を挑まれる。途中でうすうす気づく。こいつらは勝負する気はない。ただ暇つぶしに女の子の姿の僕をからかいに来ているだけだ。証拠に奴らは目がめっちゃ笑っていた。おかしい。ここに僕がいるのを知ってるのはマイだけの筈だが?


 デュパン君達は護衛の定石に従って避られる戦いは避ける。要は全てを上手くスルーした。アンジュたちは王都ではトップクラスの冒険者。それを知らない訳がなく、デュパン君たちは常にビクビクだった。僕が関係者なのではと訝しんでるようで、いつの間にか僕の呼び名がザップさんになっていた。



「やっと到着か……今日は何だったんだ?ただ往復するだけの仕事のはずなのに、何でこんな事に……」


 町の門が見えてきた。それを見てデュパンは安堵の溜息を吐いたあと愚痴る。


「やはり、この暑さのおかげで変な方が増えてるのでしょう」


 ふらふら歩いているレリーフにお前も同類だよと言う言葉を吐きそうになり、すんでで呑み込む。


「おいら、はら減った。歌で稼ぐからいいもん食おーぜ」


 ポロロン


 パムがリュートをかき鳴らす。意外にいい音だ。


「とりあえず、荷馬車を届けたら、酒場にいきましょ。あたしもくたくたでお腹ぺこぺこよ」


 僕達みんなジニーの意見に賛成した。


 

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