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 久し振りの荷物持ち 2


「と言う訳で、荷物持ちの仕事をうけた。王都からボルゾンへの往復だ。じゃあな」


『はーい、頑張ってねー!』


 僕はトイレでマイと通話して戻る。僕の魔法の収納の拡張能力で出したスマホという魔道具を使った。けど、危うく男子トイレに入る所だった。ここでふと気づいた。いったい僕は何をやってるのだろう。よく考えたら女になる能力って実は凄いものなのでは?

 何、無駄に顔バレしないため使ってるんだ?

 この能力があれば、男の夢、女風呂に堂々と入れるのではないか?

 魅力的だけど、その考えを必死に頭から振り払う。忘れよう。今は仕事を楽しむ事だけを考えよう。




「荷物持ちを引き受けてくれたザパンだ」


「ザパンだよろしく」


 僕は少しむっとする。少年戦士がその仲間に僕を紹介してくれたんだが、明らかにこいつは僕より年下なのに、いきなり呼び捨てだ。

 まぁ、雇われてる側なんでなんとも言えないがそういうイキりたい年頃なのだろう。


「女性の方の荷物持ちなんですね、珍しいですね、私、ジニーって言います。よろしくお願いします」


 清楚な感じの女性神官が僕の手をきゅっと握る。僕の回りの神官と言えば、狂犬のような神官戦士ミカと守銭奴のシャリーとか濃いやつらばかりなので新鮮だ。正直、神に祈り続けると心が歪むのではと思い始めていたくらいだ。そう、これが普通の神官だよな。


「おいらの名前はパム。吟遊詩人バードだよろしくなっ!」


 リュートを担いだ子供のような人物だ。子供にしては、なんていうか俗な顔をしている。無邪気さを感じない視線は僕の胸だ。多分ホップ族だ。吟遊詩人と言ってる割には楽器がなんかボロくて安物に見える。実際は野伏レンジャー盗賊スカウトなのではないだろうか?


「我は万物の深淵を覗く者、レリーフだ」


 なんか気持ち悪いクネクネしたポーズを取りながら、やたら痩せて整った朝黒い肌の男が口を開いた。まるで蜘蛛みたいだ。よく見ると銀のサラサラした髪の毛から尖った耳が覗いている。ダークエルフだ。初めて見た。


「見ての通り、俺のパーティーは、若干腕力に問題ありなんだ。それで大事をとって今回は荷物持ちを雇う事にしたんだ。俺の名はデュパン。ザパンとデュパン、名前が似たもの同士よろしくな」


 少年剣士はそう言うと僕の肩を叩いた。


 そして、僕たちは彼らの依頼主の所へと向かった。依頼内容は隣町への往復の護衛だそうだ。戦士、神官、自称吟遊詩人に多分魔法使い。人の事言えないけどなんか癖の強いパーティーだな。けどバランスは良さそうだ。


 とある商会の裏口に僕達は向かった。そこでは2台の荷馬車が出発の準備を終えていて、デュパンが依頼主だと思われる温厚そうな商人と話をする。しばらくして僕達は出発した。荷馬車の中はパンパンで、僕とジニーは御者台に座らせてもらい、あとの3人は幌の太い柱に掴まって荷馬車の後ろにへばりついている。街を出るまでは乗って行って、城門を出たら歩いて行く予定だそうだ。それまでは、彼らの荷物は御者台に置いてそれから後は僕が持つ事になる。

 こんな好待遇は僕の荷物持ち人生初だ。女って得だなってこの時感じた。

 そして僕達は街を抜け手続きをして城門をくぐった。荷馬車なだけあって乗り心地は余りよく無かったが座ってるだけましだ。ダークエルフのレリーフが、何回も落ちそうになってデュパンが助けていた。冒険が始まる前に怪我なんかしたら洒落にならないな。


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