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 久し振りの荷物持ち 1


「ボルゾンの町までの往復で一日銀貨5枚。誰かいないか?」


 真新しい革の鎧を着た戦士風の少年が声を張る。


 隣町のボルゾンまでなら今から出発したら夜までには着くだろう。そしてボルゾンで一泊してとんぼ返りか。銀貨5枚は少ないが危険は少なくただ往復するだけだな。


「ボルゾンでの宿代はくれるのか?」


 僕は少年に問いかける。


「すまないが、町はずれで野宿するつもりだ。あいにく俺達は金持ってないからな」


 うん、全くいいことなしだな、そんな条件じゃだれも荷物持ちを雇えないだろう。しょうが無い引き受けるか……


「ったくっ、しみったれてるな、そんなんじゃ誰も引き受けないぞ。しょうがねーな。今回だけは俺が引き受けてやるよ」


「おいおい、姉さん大丈夫なのか。べっぴんさんが野宿なんかするもんじゃねーだろ」


 隣にすわってたおっさんが目を剥く。


「おっさん、人の心配する暇あったら仕事しな。にいちゃん、俺の名はザパンだ。ザパン・グッドフェローだよろしくな」


 僕の出した手を少し躊躇ったあと少年戦士はぎゅっと握り返してきた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 マイとアンが三泊四日間、迷宮都市の迷宮に潜って家を留守にするとの事で、ザップハウスを収納に入れて久し振りに王都にやって来た。猫のモフちゃんはマイたちについて行って、導師ジブルは実家に帰っている。

 

 僕は王都では顔がそこそこに売れているので、当初はずっと頭にフルフェイスの兜を被っとこうと思ったんだが、あまりの暑さに断念した。しょうが無く今は僕の無駄スキルTSを使って女性になっている。服はスマホでマイに連絡して買って収納に入れて貰い、それを出して着ている。魔王リナに連絡してワープポータルをかりて王都に来て、冒険者ギルドに向かった。


 やりたい事は荷物持ち。


 冒険者の荷物持ちの仕事を楽しもうと思う。荷物持ちをしない荷物持ちはもはや荷物持ちではない。僕の特技が活かせて人の為になるこの仕事はやっぱりいいものだ。今回は自分に幾つかのルールを課している。まず、魔法の収納は使わない。あと、戦闘はしない。人の命に関わるような事が無い限り守る予定だ。


 ギルドに入る。1階は広いスペースにたくさんの円卓と椅子が並んでいて真ん中に広めな通路がある。その正面奥にギルド受け付けのカウンターがあり、右手奥はバー、左手は食堂になっている。以前はほとんどのテーブルは誰が座るか決まっていて、右手の奥の隅が僕が昔所属していた大陸最強と謳われた『ゴールデン・ウィンド』のパーティーの定位置だった。けど、今は誰も座っていない。懐かしさと寂しさを少し感じた。そして、僕は入口に近い左手のテーブルの椅子を引いて座る。ここは荷物持ちを生業とする者たちがたむろするテーブルだ。老若男女軽装で引き締まった体の者が多い。武器を持ってる者が少ない事を確認し、以前の不問律が生きてる事を確信する。


 仕事を求めて、水など口にしながらゆっくりしてるところで、さっきの戦士が来た訳だ。

  

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