忘れられた墓所 続中編
「ラパンちゃん、ザップはぶきっちょだから武器を変えたら使えるようになるのに結構時間がかかるのよ」
「はい、よく知ってます」
マイにラパンが答える。なんか傷つく会話だな。
「だから、この中から選んで」
床に3本のハンマーが並んでいる。お金に困ってもマイが売らなかった強力なハンマー達だ。
「全部自己修復能力がついていて、主な能力はこの四角いやつはザップと一緒の成長補助、右の丸いのは全能力強化、左のはマジックドレインの能力がついてるわ」
「では、これを貰ってもいいですか?」
ラパンの赤い目がキラキラしている。手にしたのは四角いハンマー、柄に直方体がついてて全面に大きな刺がついている奴だ。ラパンはそれをぎゅっと抱き締める。そんなに嬉しいのか?
「金剛鋼のミノタウロス王の金槌+4、自動修復、経験値取得30%アップの能力がついてるわ」
「ん、マイ、+4?それって俺のより高性能じゃないのか?それにいい材質なんじゃないのか?」
「そうね、けどザップ、これ持って何回か素振りして『いらね』とか言ってたじゃない」
む、なんと、全く記憶に無い。
ラパンも喜んでるし、僕のハンマーも守られたからまあいいか。
「マイさん、実家の借金が減ったらお金ちゃんと払いますね」
ラパンの実家は魔道都市アウフ。とある事で借金まみれだ。それで小遣い稼ぎの為に姫様なのにウェイトレスをしているのか?
まあ、けど、ハンマーを貰って、満面な笑顔のお姫様っていかがなものだろうか?しかも見せてくれないけど、ラパンは火を吐けるし。もはや人外だな。
気を取り直して僕達は墓所を先に進む。壊れた扉や、壊れたなんか解らないものとかを目にしつつ先に進む。
「ジブル!」
ラパンが叫ぶ。それは可哀相だろう。部屋に入るとカラカラ音がして、坪の中から白いものが浮遊して組み上がり、スケルトンが現れた。
魔道都市の導師ジブル。子供族の合法ロリ魔法使いは、スケルトンに変身するという変態だ。確かにスケルトンを見て連想するのは彼女しかいないが、なんか気持ち少し可哀相だ。一応女性だしな。
「いただきます!」
新しい武器を手にしたラパンは意気揚々と駆け出し、スケルトンを文字通り粉砕した。
「腕のいいスカウトがいたみたいだニャー。ことごとく罠が解除されてるニャー。ザップが罠にかからなくてつまんないニャー」
シャリーにだっこされたモフちゃんが口を開く。なんか剣呑な事言ってたけど、可愛いから許す。むしろギューして顔を突っ込んでもふもふまみれたい。今、モフちゃんはシャリーの腹巻き代わりにされている。へそ出しシャツとミニスカのシャリーはお腹が冷えるとか言ってモフちゃんを確保していた。
それから結構歩いて大きな扉にたどり着いた。
金属の扉を開けると広い部屋の奥の方に微かに人影が見える。
「シャリー」
「はーい!聖なる光よ辺りを照らせ!ホーリーライト」
部屋の中自体が魔法の灯りに照らされる。昼間並みに明るい。
部屋の奥の人影は冒険者風の格好の4人。懐かしい『ダンスマカブル』だ。立ったまま微動だにしない。どうしたんだ?