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 斧焼き肉


「僕には、ザップさんの記憶が有るんだけど、あの斧でする焼き肉食べてみたい」


 ラパンがマイにねだっている。


 僕達は今、ザップハウスのリビングで寛いでいる。僕はソファで読書、マイはタブレット片手に僕の収納の中の整理、ドラゴンの化身アンと妖精ミネアは横たわってぐたーっとしている。その横にはホルスタイン柄のもふもふ猫が寝ている。

 ちょうど今ラパンが家にやって来て、晩御飯は何にしようかという話になった。


「焼き肉っ!」


 ドラゴンの化身アンが叫び、なし崩し的にアンが不当に稼いだお金で美味しい焼き肉を食べるという事になった。

 そして、ラパンが斧焼き肉を体験したがっている訳だ。


 ん、ラパンに僕の記憶がある!


 そうだ、なんというか僕とラパンは魂的なものがくっついて、ラパンにはある程度僕の記憶がある訳で、僕は血の気が引く。美少女であるラパンが僕がしたあんな事、こんな事を知っている訳で…

 まあ、逆に僕はラパンのあんな事やこんな事を知っている訳で…


「うん、じゃあ、久しぶりに斧焼き肉でもしますか。そっか、ラパンってザップの事色々知ってるのね、今度じっくりはなそっか」


 いかん、それは気まずすぎる。


「そっか、そっか、斧焼き肉か、よし、マリアさんのお店を借りよう」


 僕はラパンの手を引いて、隣のマリアさんの店へと急いだ。ラパンには口止めしとかないとな…



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

「そろそろ焼いてもいいぞ」


 マリアさんのお店『みみずくの横ばい亭』のテーブルに炭焼きのコンロを借りて持ってきてその上に焼き肉用のミノタウロスの斧をわたして、カンカンに熱くなるまで熱した。斧に脂を塗ると白煙がすぐに上がる。良い温度だ。ずっと焼き肉に使っていたこの斧はいい感じにコーティングされてフライパンのような黒色になっている。もはや武器では無く調理道具だ。


『いただきます』


 僕達は唱和して肉を焼き始める。今日はちょうどお店に高級な牛肉が入ったそうで、結構な金額を払って買い漁った。


「うう、あたしも焼き肉たべたい…」


 メイド服姿の大神官だったシャリーが悲しそうにしている。彼女は今日はお店でアルバイトだそうだ。悪いが彼女の仕事が終わるまでには食べ上げてやる。


 新鮮なお肉を斧に表をジュー、裏をジューっとして口に入れる。まずは塩コショウのみだ。


 美味い!


 最高に美味い!


 ダンジョンにいた頃は、味のしない血生臭い肉をしっかり火を通して噛み締めながら食べたものだ。あの時はそれも美味しく感じていたが、やっぱり大人数でワイワイ食べるのには敵わない。


「うわ、これ、めっちゃ美味しいですね」


 僕の真似をして、ラパンが目を見張る。


「あたしの中では美味しいお肉を1番美味しく食べる方法はこれだと思うわ!」


 マイがラパンに微笑む。僕も同意見だ。鉄板で最小限焼いたお肉は柔らかくジューシーで口の中でとろける。


「マリアさん、シャリー少し借りていいか?」


「いいわよ」


「おい、シャリーお前も食べろ」


「え、いいんですか?」


 僕は椅子を持ってきてシャリーを座らせる。この肉は美味しい。美味しいものはみんなで食べないとな。


「おい、アン、しっかり味わえよ。あと野菜も食え」


「ええーっ、ドラゴンは肉食で草は食べないんですよ」


「アンちゃん、今日は雑食になりましょうね!」


 マイがアンの焼き肉のタレににドサドサ野菜を焼いて入れる。ナイス、アンをどうにかしないと肉がすぐ無くなってしまう。気を抜くと生でもいきやがるからな。


 隣を見ると人間に化けた妖精ミネアが一心不乱に肉を焼いて食べている。こんな所にもライバルが。


 僕達は、ワイワイ焼き肉を楽しんだ。1番の調味料はみんなの笑顔だな。柄にも無く僕はそう思った。


 そして、『みみずくの横ばい亭』に斧焼き肉というメニューが増えた。

 



 

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