第三十五話 荷物持ち理解する
「お前、よーく見ろ、俺はお前とは初対面だ!」
少女は震えながら顔を上げる。
僕はその顔をじっと見る。うん、見たことない。間違いなく今まで話した事も、会った事も無い。
ん、気になって少女の瞳を見る。大きくて澄んでいる。とっても優しそうだ。言うならば、草食動物のような印象をうける。
最近この瞳をどっかで見た。
そうだ、ドラゴンだ! ここにいたドラゴンと同じ目をしている。あの、チキンの家畜野郎の目だ。
「お前、ここにいたドラゴンはどこにいったか知らないか?」
「え、話してて解らなかったのですか? 私、ドラゴンですけど?」
少女は不思議なものを見るような目で僕を見る。なんか馬鹿にされてるようで少し腹が立つ。
解るか!
解ってたまるか!
どうしたら小山のようなごついドラゴンと、気の弱そうな少女が結びつくと言うのだ……
「あなたたち、何言ってるの、こんな可愛いドラゴンいるわけないじゃない」
僕もマイが言うとおりだと思う。だけど、事実こいつはドラゴンだろう。
「ブレスを吐け!」
僕はハンマーをペシペシ叩きながら命令する。
「はいっ!」
少女は即座に立ち上がると、僕に向かって息を吐きかける。口の前で光が渦巻き炎となって僕に襲いかかる。まごうことなきドラゴンブレスだ。範囲は狭くなってはいるが、威力は十分だ。ここしばらく幾つものブレスを見てきたから解る。残さずそれを収納にいただく。
「よし、褒美だ!」
僕は収納からヘルハウンドを一匹出す。
「私、あんまりヘルハウンドの肉は好きじゃないんですよ固いし臭いですし。お腹すいてるから頂きますけどね……」
「贅沢言うな!」
「すみません。このままじゃ食べにくいので、一旦もどりますね、ちょっと下がって下さい」
僕たちの返事を待たず、少女はその場で大きく跳び上がると、一瞬光り、僕らは何かに弾き飛ばされる。
起き上がって見ると、さっきの巨大なドラゴンがヘルハウンドを口に咥えて丸呑みにしていた。
「ド、ドラゴン!」
マイが座って絶句している。けど、それだけですんでるのは正直凄いと思う。僕は初めて会った時は、力が抜けて足がもつれてたからな。
「良かった、ザップが変な事してた訳じゃなかったのね!」
そこかよ。
マイは胸を撫で下ろしている。マイにとって、ドラゴンよりそっちの方が大事なのか?
「あいつ、お仕置きだな! 俺たちを吹っ飛ばしやがって!」
僕はハンマーを握りドラゴンをどつきに行こうとする。正直少し痛かった。
「止めて! あの子女の子なんでしょ、優しくしてあげて!」
マイが両手を広げて僕の前に立ち塞がる。僕はハンマーを下ろす。マイに免じて勘弁してやる事にする。
目の前でドラゴンが一瞬光るとみるみる小さくなり、さっきの少女になる。遠目に裸だったが光りの粒が集まり服になった。
少女は僕たちの所に歩いてきて口を開いた。
「ごちそうさまでした」
少女は僕に向かって手を合わせた。
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