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 荷物持ちの休日


 今日は休日。今日は何もしない。朝起きて僕は心に誓う。

 けど、休みといえど鍛錬は別だ。顔を洗って庭に出る。


 庭に出ると、隅の方に屋台が2軒ある。僕達の素振りはまたいつの間にか見物客が押しかけるようになり、商魂たくましいマイとシャリーがプロデュースして食べ物を売っている。

 今日はから揚げとパンに何か挟んだものみたいだ。今日の売り子はラパンとシャリーだ。ヒラヒラのメイド服を着ている。2人に軽くあいさつして、愛用のミノタウロス王のハンマーを出したところで、マイも外に出てくる。猫のモフちゃんもついて来た。

 次は少女冒険者の4人組が家から出てくる。4人は今、迷宮都市に滞在しているが、そのそばにあるワープポータルを使って家に来る。

 ここ数日は毎日素振りに参加している。日帰りの探索を行っているのだろうか?

 戦士のアンジュは赤い鎧、神官戦士のミカは神官服、魔法使いのルルはダボッとしたローブ、自称野伏のデルは今日も道着に身を包んでいる。もうデルのクラスは格闘家グラップラーでいいのではないだろうか。

 

 そしてそれに北の魔王リナが続く。リナは暇なのかほぼ皆勤だ。


「リナちゃーん!」


 いつの間にか増えて来たギャラリーの中から声援が飛ぶ。リナの恰好はいつも通りの金色のビキニアーマー。それ目当てに見物している者も多く大人気だ。リナは観客に軽く手を振る。意外にもファンに対してはフレンドリーだ。


 そして、思い思いの武器を手にして素振りを始める。ミノタウロス王のハンマーを振り上げ全力で振り下ろす。


 ブォン!


 風を切る重い音がする。他のみんなはミノタウロスの斧を手にしているが、どれも大きくて重い。多分、人1人位の重さはあるんじゃないだろうか? 屈強な男が両手で持ち上げるのがやっとのような武器を可憐な少女達が扇であおぐかのように軽々と振っている。

 これだけでも観客は退屈はしないのかも知れないが、だいたいこれに余興が加わる。


「モンキーマンザップ、手合わせ願おう!」


 観客の間をぬって1人の騎士が現れる。銀色の全身鎧に身の丈程もある大剣、どっかの国の騎士だろう。鎧の胸には見たことのないエンブレムがついている。重騎士、普通に歩いて近づいてくる。鎧に負けていないその膂力は凄まじい事だろう。


 ほぼ毎日、腕試しを求める者がやって来る。これがさらに観客を楽しませているのだろう。


「えー、本日も新たな挑戦者を迎えました。それでは皆様、いつものように希望される対戦相手の名前を大声でお願いします」


 マイが手にした、声を大きくする魔道具で観客に話かける。


「ラパンちゃーん」


「ラパン!」


「「「ラパン! ラパン! ラパン!」」」


 まばらな掛け声がいつの間にか1つになってラパンコールに包まれる。このように対戦相手は観客に決めてもらう方式なのだけど、今だに僕の出番はない。ラパン、リナ、マイが人気で、あとはランダムだ。


「えー、この恰好で戦うんですか?」


 ラパンはそんな事いいながらもノリノリで前に出る。彼女の服はフリフリのメイド服だ。


「おい、ふざけてるのか? こんな小娘が俺に勝てると思ってるのか?」


 鎧の一人がドスの聞いた声を出す。嗚呼テンプレだ。


「ああ、勝ったら相手してやる」


 僕は気にせず素振りに精を出す。


「それでは宜しくお願いします」


 ラパンは鎧に頭を下げる。


「ふざけやがって!」


 鎧の人は、大剣を大上段に振り上げラパンに向かう。意外に早い。


 ラパンはそれをギリギリでかわすと、鎧の人の兜に回し蹴りを放つ。パンツ見えたんじゃないのか? 鎧の人は数メートル吹っ飛ぶと動かなくなる。けど、ラパンは手加減している。ギャラリーに被害がないように。


「「「ラパンちゃーん!」」」


 辺りは熱狂に包まれる。そりゃそうだ。めっちゃ強そうな騎士がメイドに一撃でのされてるんだからな。


 たまには僕も戦おうかな。すこし羨ましいと思いながら、僕は素振りをし続けた。


 今日はいい休日になりますように。



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