猫の世界
すみません。働く時間が変わって少し不定期になります。よろしくお願いします。
「シュナ、しっかりとザップの役にたっておるか?」
北の魔王リナ・アシュガルドが口を開く。金のツインテールに金のビキニアーマー、最初に会った時にはただの痛い人かと思ったけど、戦闘能力はピカ1だ。
「人違い、いや猫違いじゃないか?そいつの名前はモフちゃんだ」
僕はマイの膝の上で丸まっているモフちゃんを撫でる。白地に黒のホルスタイン柄が可愛い。
なんかリナの妹とか言っていたけど、無かった事にする。リナに家の猫だからとか言われて持って帰られたら困る。
せっかく家に来た猫だ。こいつを守るためならリナとの戦いも辞さない!
「シュナなんて名前じゃないでちゅよねー、モフちゃんでちゅよねー」
マイはモフちゃんをモフモフする。ぼくもモフモフにトライしたい所だけど、まだ撫で撫でで留まっている。もう少し仲良くなったら心ゆくまでモフモフしたいものだ。
「はーい、僕はモフちゃんですぅ。シュナって誰ですか?しらないですぅ」
モフちゃんは目を細めながら口を開く。マイの料理を食べてコロッと堕ちた。しかも何故かマイに対してだけ態度が違う。猫なのに猫かぶってやがる。
ドラゴンの化身アンが気配を殺してモフちゃんに近づくが、モフちゃんはひらりとマイの膝から飛び降りる。
「おい、こら、トカゲ、今、触ろうとしたやろが。近づくなや、鱗うつるやろが!」
モフちゃんはドラゴンがお気に召さないみたいだ。まあ、食料扱いされたから当然ではあるが。
「そんなぁ、仲良くしましょうよ、私もモフちゃん触りたいです……」
アンは少ししょげてる。徐々に信頼関係を築いて行くしかないだろう。けど、第一印象罪悪感だったから、アンがモフれる日は遠い事だろう。
「まあ、仲良くやってるようであるな。シュナいやモフちゃんは気が強いからもしやと思ったがよかった。それではまた来るぞ」
リナは言い残し去っていった。よかった。連れて帰られなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「モフちゃん、危ないから帰ろっか」
マイが抱っこしているモフちゃんに話かける。
「大丈夫ですよ、私、これでもアシュガルドでトップクラスの魔道士、四天王の内の1人でもあるのですよ」
モフちゃんが目を掻きながら答える。猫が顔を洗う時は雨が降るって本当なのかな。そうか、四天王なのか、人魚の次は猫。四天王って人外ばかりなのか?
そうこう森の中を歩いているうちに、今回の獲物を発見した。今日の依頼はオークの一団の討伐。数が多いので僕らが引き受けた。豚共が20体前後、僕達の前にいる。
「今日は特別に俺様の最終奥義を見せてやるよ!」
そう言うと、モフちゃんはマイの腕から飛びだして一直線にオークの集団に向かう。
「おい、待て!」
僕は追っ掛けるが間に合わず、モフちゃんは豚共の中に突っ込んだ。
「猫の世界!」
モフちゃんの声がして、そこから光が溢れ出す。その光はオークを包み込みさらに膨れ上がる。ん、今、世界って言葉が聞こえたような?
「マイ、アン、あの光はやばい逃げるぞ!」
僕達は踵を返しなんとか光から逃げ切る。そして振り返るとそこには天国が広がっていた。たくさんの猫ちゃんと戯れるモフちゃん。
なんと素晴らしい魔法だろう。全ての生き物を猫ちゃんにする魔法か。けど、どうしよう。もとはオークだったとしても、僕は猫と戦うなんて出来ない……