荷物持ちと猫
今、可愛い猫と戯れたです。猫っていいですよね。
「ニャーゴ」
家から外に出ると、そこには猫がいた。通った鼻筋にフカフカな毛並み、正直とても可愛い。
けど、全てを持っていってしまうのがその模様。白地に黒い不揃いなまだら模様。ホルスタイン、乳用の牛柄だ。
ここらでも野良猫をちらほら見るが、1匹として僕には近づいて来ない。
そうなのだ、僕は動物には余り好かれない。僕を見ると動物は基本的に逃げていくし、赤ちゃんは声を上げて泣きだす。今まで数多の屍を築き上げて来た僕から、オーラ的なものでも出ているのだろうか?
「ウニャーン」
なんと、猫奴は僕にその体をすり寄せてきた。これは触ってもいいという合図だろう。そうだそうに違いない。思う存分モフモフを堪能してやる。自然と僕の頬が緩む。
「モフモフしてもいいのだな?」
つい、僕は相手が猫と言うことを忘れて話しかけてしまう。誰もいなくて良かった。誰かに見られたら猫とトークする痛い奴か動物しか友達がいない寂しい奴だと思われる所だった。
人には言った事はないが、僕はフサフサとした毛が生えた系の動物が好きだ。好きだと言うよりも愛している。
口に出したらしばかれるかもしれないが、マイを始めて見た時に、1番僕の心をかき乱したのはその猫耳だ。始めてそれに手を触れたときには、それはそれは感動したものだ。
うちのまわりにいる猫もモフモフしたいのだが、僕を見るなり逃げていく。1度は全力で追いかけてみたが、追いつけず、その猫を見る事は2度と無かった。
「おう、お前、意外に礼儀正しい奴なんだな、いいぞ、触れ、でも5秒な」
なんだ、誰が僕に話かけたんだ?
辺りを見渡すが誰も居ない。
「何、キョロキョロしてんだ? 触るんなら早く触れよ、俺様はそう安々と人には体を触れさせないんだからな」
僕はしゃがんで猫を見る。猫、猫が喋りやがった。しばし思考が止まってまったが、そんな事はどうでもいい。モフモフだ。猫がモフモフしていいって言ってるんだ。5秒は短いな。もっと後でせがんでみよう。
「では、モフモフさせていただきます」
猫に頭を下げたあと、僕は恐る恐る手を伸ばす。
「いいぜ、早くやれ」
僕はその体に触れる。やばい、超モフモフだ。最高だ。ああ、駄目になってしまいそうだ。温かく、サラサラでフワフワだ。しかもなんかいい匂いがしてる気もする。
「おい、時間すぎたぞ」
楽しい時間はすぐに過ぎ去り、僕は未練がましく手を離す。
「お、お前に提案がある。もしよかったらうちで一緒に暮らさないか?」
僕は勇気を振り絞り、口を開く。なんか女の子口説いてるみたいだな。なんかとっても緊張してしまう。けど、このような猫が何がなんでも欲しい。
この猫ちゃんは、なんか生意気な口をきいてるけど、そこがまた可愛らしい。家の中でこいつと猫じゃらしで遊ぶ事を考えてワクワクする。
「おいおい、いきなり同棲はないだろう。まずは友達からでお互いの事をもっと知らないとな。私の名前はシュナ・アシュガルド。リナの妹だ。そうだな、まあ、しばらく厄介になってもいいかな」
牛柄猫のシュナはそう言うと、僕の横をすり抜けて家の方へ向かう。
「おい、扉開けてくれよ、猫には不便な扉だな」
リナ? 妹? なんか猫が言ってた気がするが、聞かなかった事にする。家に可愛い猫が増えたそれだけだ。そう自分自身に言い聞かせ、扉を開けて猫ちゃんをエスコートして、僕達は家の中に入った。