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 柔よく剛を制する


「ザップ、ザップも一緒にデルに格闘技を習わない?」


 そんな感じでマイに誘われて、僕達は今、草原に来ている。僕とマイにアンも付いてきている。ラパンとシャリーと妖精ミネアは今日はマリアさんの店で働いている。

 僕達の前には、東方の着物という服にも似た、前で布を合わせて帯で縛るタイプの服を着たデルが待っていた。髪は後ろで束ねて白いはちまきをしている。その服は白で帯は黒、そういえば東方で武術の達人の事をブラックベルトと言うと聞いた事がある。


「今日はですね、柔術と言われる、投げ、固め、締め、関節技を体験して貰おうと思います」


 そういえば、ラパンだった時に見たデルの闘い方は敵を掴んで投擲するという物騒なものだったが、正直、見てもどうやって投げているのか解らないものもあった。優れた技術は魔術に見えるっていう言葉をどっかで聞いた事があるが、まさしくその通りだと思った。


「それでは、そうですね、アンさん、お相手お願いします。なんでもいいから、素手で攻撃してきて下さい。全力だと私が耐えられないと思うので程々でお願いします」


 アンが、え、私って感じで自分を指差すと前に出る。アンと比べるとデルは頭1個分くらい背が高い。


「それでは、程々でいきますよ!」


 程々と言った割には、結構ガチ目でアンはデルに殴りかかる。


「え!」


 デルの姿が沈んだと思ったら、殴りかかったアンは驚きの声を上げて、数メートル吹っ飛んで行った。


「何が起こったんだ?」


 僕の口からつい言葉が漏れる。


「ザップの方からは見にくかったと思うから、あたしにアンちゃんがやったみたいに殴りかかってきて」


 マイに殴りかかるのは抵抗があるので、もし当たりそうな時は寸止めしようと思って踏み込みながら殴りかかる。マイは身を低くして僕の右手を左手で掴むと、そのまま左手で僕の股間に手をいれて、首の上に僕を担ぐとその場で立ち上がった。マイに向かって行った僕の突進する勢いを引っ張ってさらに加速して下から突き上げる事で、僕の体は簡単に宙を舞っていった。


「さすがですね、マイ姉様、これが肩車という技です。今のように突き上げると、投げっぱなしで飛んで行きますけど、うまく手を引っ張る事で、地面に頭を叩きつける事も出来ます」


 僕はなんとか着地出来たけど、呆然としてしまう。


 触られた。マイに触られた……


 僕もその技を練習したいけど、僕には無理だ、あんな所を触るのはハードルが高過ぎる。けど、凄い。相手の力を利用して投げるのか。


「それでは、アンさん、またお願いします」


「えー、またやられ役ですか、私も投げたいですよ」


 少しアンが拗ねる。しょうがないな。


「俺がいこう」


 僕はデルに加減して殴りかかる。つぎはその手を取られて、引き寄せられデルが僕に背中をあてたと思ったら、地面に背中を打ち付けていた。一瞬呼吸が止まる。


「ザップ兄様、ありがとうございます。これは背負い投げって言います」


 僕もそれをやってみたいけど、それをしたら、僕の背中に彼女たちの胸が当たる事になる。残念ながらこれも無理だ。


 その後も、僕はデルの技の犠牲になり続けて、心の底から男の友人が欲しいと思った。技は見てある程度掴めたので、彼女らで練習するのは諦めて今度トロールやオークで試してみようと思う。なんかめっちゃ友達いない人みたいだな……




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