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「ダメよ、固すぎる。ザップ固いわ、固すぎるわ!」


 マイの吐息が僕にかかってくすぐったい。固いのは固いのでしょうがないじゃないか……


「うううーっ!」 


 マイは、その柔らかい体を押し付けてくる。


「いち、に、いち、に」


 マイはリズミカルに僕にその柔らかい体を押し付ける。駄目だ!我慢出来ない……


「駄目だ!マイ!折れちまう」


 僕は我慢出来ず、声を荒げる。このままだと背骨が折れてしまう。それに、背中になにかが当たっているのを意識して、変な所が元気になりそうだ。


「マイ姉様、今日の所はこれくらいで、毎日少しづつ柔らかくしていきましょう」


 エルフの少女デルからストップがかかって、なんとか幾つかの窮地を脱する事が出来た。


 何か変な事をしてる訳でなく、今は柔軟体操をしている。

 僕は座って足を開いて体を前に倒そうとしていた所だ。マイもデルもペタンと頭まで地面につく。それに対して僕は全く体が曲がらない。今まで、柔軟体操とかいうものは全くやったことがないから、当然と言えば当然だ。

 なぜ急に僕が柔軟に目覚めたかと言うと、今日の朝の日課の素振りの後、参加していたデルが腕試ししたいと言うことで相手をした。

 今日は徒手空拳で戦ったのだけど、僕の攻撃方法は右ストレートとヤクザキックだけなのに対して、デルの攻撃は多彩で、僕の全ての位置を狙ってくる蹴り、緩急のついた拳のコンビネーション。特に美しいのはハイキック。コンパクトな蹴り足が気が付いたときには僕のこめかみに伸びてくる。それを躱す時パンツが見えてたのは眼福だけど、マイにばれたら大事だ。

 なんとか擦らせずに終わったけど、レベルと身体能力が隔絶しているおかげで、それが近くなったら一方的にやられそうだ。

 僕はデルのハイキックを真似てみた。足が腰の高さくらいしか上がらない。


「ザップ、何してるの?もう一回やってみて」


 マイのリクエストにこたえ、僕はまた蹴りを放つ。


「うわ、街とかで酔っ払ってゴミ箱蹴ってる人みたい……」


 なんだと、そんなに格好悪いのか?僕の心の底の何かに火がついた。


「デル、すまないが、教えてくれないか」


「良いですよ、これですか?」


 デルはその場で大振りの孤を描く回し蹴りを披露する。綺麗だ。まるで女神が舞っているかのようだ。あ、ばっちりパンツ見えた。


「ザップ、何処見てるの!デル、スパッツ穿いて!ザップのえっち!」


 いかん、つい視線を持っていかれてしまった。


「まて、俺は見たんじゃない!見えたんだ!」


「関係ないわ……」


 デルとマイはスパッツを穿いて、僕の楽しみが少し減った。


「ハイキックを放つためには、まずは足が上がらないと無理なので、まずは柔軟体操。私は毎日、読書とかしながら2時間くらいはやってます」


 そういうと、デルは頭をさげる。膝にぴったりと頭がつく。しかも足はぴんと伸びたままだ。マイも真似するが、柔らかいけどデルほどでは無い。僕もしてみるが、深いお辞儀程度にしかならない。


 斯くして、柔軟体操が始まった訳だけど、マイとデルがさじを投げるのに大して時間はかからなかった。そのジト目が痛かった。今日から毎日柔軟体操する事を僕は誓った。

 

 

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