カイノミ
「ザップ、カイノミって知ってる?」
マイが唐突に僕に聞いて来た。なんの事だ?『カイノミ』?貝の実?貝のような実の事だろうか?頭の中を総動員してもとんと思い浮かばない。
「んー、聞いた事ないな?」
「じゃあ、どんなものか考えてみてー」
マイはしつこく聞いてくる。マイの機嫌は良さそうだから、悪い物事ではなさそうだ。んー、なんていうか、こういう女の子のしつこい絡みは苦手だけど、無下にしたら絶対マイは機嫌を損ねて僕の晩御飯が貧しくなりそうだから、細心の注意が必要だ。
「もしかして、新しい魔王とか竜王の名前なのか?」
「はっずれーっ。『魔王カイノミ』『竜王カイノミ』ってなんかとっても弱そうじゃない」
マイは微笑む。良かった。ウケはしなかったけど、アウトではなかったみたいだ。
「んー、解んないな教えてくれよ」
「ヒント、美味しいもの!」
マイがイタズラっぽく笑う。そう言われても見当がつかない。
「必殺技か一発芸なのか?」
「確かに、タイミングよければ美味しいけど、食べ物よ!」
いかん、マイの笑顔が苦笑いに変わった。我ながら面白くなかったな……
「わかったー!肉肉肉肉肉ーっ!」
ドラゴンの化身アンが叫ぶ。いい年なのに肉肉肉叫ぶのは止めて欲しい。
「はい、アンちゃん正解!」
マイがエア拍手をする。そうか『カイノミ』って肉なのか。
「お肉の『カイノミ』って牛肉のとっても柔らかくて美味しい部位なのよ、マリアさんから売ってもらったの。と言うわけで今日のご飯は焼き肉でーす」
僕はフィレ肉やサーロインは聞いた事があるが、『カイノミ』ってお肉は聞いた事もないし、食べた事も無い。しかも、僕たちの中で多分1番のグルメだと思われるマイが美味しいって言うのはとっても期待できる。
前々から聞こうと思っていて、タイミングを逃してきた質問をマイにしてみる事にする。
「ところで、マイってなんでそんなに料理や食べ物の事詳しいんだ?」
マイは目をぱちくりする。
「え、ザップには言ってなかったっけ、あたしは冒険者になる前の子供の時は国境をまたいで旅する旅芸人の一座にいたのよ。そこでは大道芸や歌や踊りを披露するだけじゃなく、興行の時にはいろんな食べ物の屋台とかも出してたのよ。そのとき色々学んだのよ」
「そうなのか」
それは初耳だった。
そのあと僕たちはカイノミの焼き肉を食べた。気が付くと少女冒険者4人と、ラパンとシャリーも合流していた。大勢でワイワイ楽しくしてたのもあるけど、『カイノミ』はマイの言うとおり、とっても柔らかくてしかも程よく脂ものっていて、僕の大好物が1つ増えた。
と言うわけで、私は『カイノミ』切ってるなうです。美味しいですよ!
最近お肉を切ってる、みやびからのお願いです。
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ちなみに、リゼロの作者様も元お肉屋さんって聞いてます。