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 新しいご主人様 前編


 コツン、コツン、ゴツッ!


 何かが私の頭を叩く。地味に痛い。


「ブレスを吐け!」


 目を開くとそこには猿人間がいた。今度は全裸ではなく、肩と腰にこ汚いボロ布を纏っている。裸の時よりもより野蛮さが際だって、私の体が恐怖で強張る。


 そうだ、さっきこいつに頭を殴られたんだ。しかも一撃で意識を刈り取られた。最強の生物である私にそこまでのダメージを与えるとは何という馬鹿力なんだろうか。そしてそのあと何らかの液体をかけられたみたいだ。少し濡れてて肌寒い。


 そうだ、私の名前はアイローンボー最強の竜種。ん、それだけしか思い出せない。もしかしてさっきの打撃で記憶とかそこら辺を全部もってかれたのでは?


 そう言えばこいつ、私にブレスを吐けって言ったような。どういう事だろうか?自殺願望でもあるのか?まぁいいや、そんなに燃えたいのなら燃やしてやる。


「ゴオオオオオオオオーッ」


 私は要望通りブレスを吐いてやる。これで猿人間は消し炭になることだろう。


 な、なにっ!


 私は目を見開く。何が起こっているんだ?私のブレスが猿人間に当たる前に消滅している。私のブレスは何者でも焼き尽くす。防御魔法か?いやおかしいだろう。英雄、勇者とか言われる者の防御魔法でさえも私のブレスを完全に防ぐ事は出来ない。全力を出してやる。気合を入れて吐き続けるが、猿人間は涼しい顔をしている。私のブレスは尽きてもはや煤しか出ない。


「グガッ」


 私の下顎に激痛が走る。途切れゆく意識の中最後に視界に入ったのは刺の付いた鉄球を手にした猿人間だった……



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 私は目を覚まし安堵する。良かった、生きている。さっきの生き物はなんだったんだろう。原人か野人かと思ったけど、人間の言葉を話していた。まぁその事は忘れようさすがにもう来ないだろう。


 ビタン。


 ビタン。


 ビタン。


 私の耳が何かの音を捉える。何だろう。何の音だろう。

 私は耳を澄まして目を閉じてその音に集中する。足音、柔らかいものが地面を叩く音だ。そうだ足音だ、こういう足音を立てるのは裸足の人間やエルフとかだな。エルフじゃないな、エルフだったら体重が軽いからもっと音が高い。それに靴履いてる筈だし。と言うことは裸足の人間の足音……


 足音の主が私の視界に入る。やっぱり猿人間だ。体の震えを必死に止めて目を瞑る。眠っているふりをしたらやり過ごせるかも知れない。


 ゴッ、ゴッ!


 何か重い音がする。薄目を開き見て見ると、猿人間が鉄球がついた棒で地面を小突いている。良かった、小突かれるのが私じゃなくて。なんかほのかにいい匂いがする。お肉を煮こんだような匂いだ。もしかしてこいつは私を食べる気なのか?私は目をギュッと閉じる。


「起きろ!ぶん殴るぞ!」


 叩かれるのは嫌なのでしぶしぶ目を開ける。猿人間と目が合う。冷たい目だ。まるで虫ケラでも見るかのような目で私を見ている。今まで生まれて始めての経験だ。私の背筋に冷たい何かが走る。そして、彼は口を開いた。


「早く出せ!」


 出せって何を出したらいいのだろうか?ここで間違えたらまた球のついた棒で叩かれそうだ。それだけは勘弁して欲しい。さっきはブレスを欲しがっていた。何故かは解らないけど、また今度もそれでいいのだろうか。私は躊躇いながらも猿人間さんにブレスを吐いてみた。



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