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第三十二話 荷物持ち焦る


 やってしまった!


 僕に膨大な力が流れ込むのを感じる。ドラゴンを討伐してしまったからレベルアップしたのだろう。


 いかん!


 まだ間に合うか?


 僕は急いで駆け出す。ここで奴に死なれたら困る。これからどうやってブレスを補充したらいいんだ?


 ドラゴンの頭の所に駆け寄り、その上に乗り、なり振りかまわず、手当たり次第、まるで滝のようにエリクサーをかける。へこんでいた所が瞬時に戻り、ドラゴンは激しく震える。


「ゴファーッ!」


 ドラゴンは口から粘っこい胃液のようなものを吐き出すと、規則正しく呼吸しはじめた。良かった。峠はこえたみたいだ。あとは時間がたったら目を覚ますだろう。


 ドラゴンブレスの量がまだ心許ないので、時間を置いてまた来ることにする。無我夢中だったので、咄嗟に放り出した愛用のハンマーを拾って、広間を後にした。


 通路を歩きながら考える。あのドラゴンはこのフロアのボスだろう。中ボスと思えるミノタウロス王とそこまでレベルの差はないはずだ。ミノタウロス王とほぼ互角に僕は戦えたから、ドラゴンとも戦えてもおかしくない。

 たまたま急所にはいったから、倒しそうになったのかもしれないが、これからはドラゴンに関する認識を改めるべきだろう。もっと大切に扱わないと、巨大な割にデリケートな奴だ。


 泉の部屋にたどり着き、扉を開ける。


「ザップ! 良かった……心配したんだよ!」


 マイが駆け寄ってくる。僕に抱きついて来ようとするので、手で頭を押さえて制する。なに裸の僕に抱きつこうとしてるんだ? 女の子を主張して、恥ずかしがってたマイはどこに行ったんだ?


「マイ、近すぎる」


 ミノタウロスの腰巻きを収納からだして纏う。なんでもっと早くつけなかったのだろうか。まあ、ドラゴンが死にかけて焦ってたからな。


「ドラゴンはどうだったの?」


「危なかった」


「やっぱり凄かったんだね……」


「あと少しで一撃で殺してしまうとこだった。エリクサーで何とか助ける事が出来た」


「え…………一撃で殺してしまう? ドラゴンがザップを?」


 マイは理解出来ず混乱してるようだ。


「俺がドラゴンをだ」


「ええーっ! と、ということは、ザップがドラゴンを倒せそうになったってこと?」


「そうだ」


「それを、エリクサーで助けたの?」


 マイは顔をしかめる、なんか怪訝そうな感じだ。


「そうだ」


「ん、なに言ってるの? なんで倒さなかったの? 倒したらドラゴンスレイヤーの英雄になれたのに!」


「そんなものはいらん。欲しいのはブレスだ!」


「………」


 マイはしばらく僕の顔をじっと見つめた。


「何か間違ってるような気がするけど、ザップが無事ならまあいいや」


 マイは僕に微笑んだ。納得したようだな。


 泉から使った以上のエリクサーを補充する。焦ってたので、思いの外消費してた。


 万全な状態のドラゴンブレスが欲しいので、ドラゴンを休ませるためにしばらく時間をつぶすことにする。


 マイには料理を頼み、僕は武器の手入れを始める。


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