から揚げ屋台
今日は久しぶりにから揚げの屋台に居ます。その合間にから揚げの素晴らしさを感じていただきたくて書きました。から揚げ食べましょう!
「いらっしゃいませ!」
僕は元気よく叫ぶ。こう言うのは勢いが大事だ。
僕は今、祭りの屋台でから揚げを揚げている。ツツジとかいう、今咲いている花の名前がついた祭りだ。
『いらっしゃいませ』という言葉を発すると、少し変な感じがする。少し前、僕はラパンという少女で、フリフリのメイド服を着て、にこやかな笑顔でレストランで働いていた。
考えるだけで怖気がする。この僕がメイド服を着ていたのだ。黒歴史だ、今やれと言われても絶対にむりだ。
「ザップ、感じよくなったんじゃない?メイド服出そうか?」
マイがいたずらっぽい笑顔で僕を見る。一瞬心を読まれたのではないかと動揺してしまう。
そう言うマイはラパンが着ていたのより、さらにフリフリが多いメイド服だ。恥ずかしいとか言ってた割にはノリノリだった。
「ご主人様、暇ですね、お客さん来ないですね」
頭に生えた角にまでリボンをつけた、これまたノリノリのドラゴンの化身アンが台に頬杖をつきながら口を開く。マイとお揃いのメイド服で目がトロンと眠そうだ。つまみ食いし過ぎだよ。
やっとお客さんが来て、僕はから揚げを揚げる。漬け込んでいた鶏肉を片栗粉で揚げる。砂時計で4分半まって、揚がったのを網の上で1分しっかり油をきる。揚げる時間も揚げた後の時間もしっかり砂時計で管理されている。ギリギリ火を通して、余熱で赤みをとる形なので、外はサクサク中はジューシーな最高の仕上がりだ。
因みに全部マイが考えている。今度、折があったらなんでそんな事知ってるのか聞いてみよう。
暇だ。思いっきり暇だ。やっぱりツツジとかいう花の祭りだけあって、有名な桜と言う花の祭りほどの集客力がないのだろう。
「しょうが無いわね、いっちょやりますか!」
マイが腕まくりをする。ああ、あれか。僕にはだいたい見当がついた。
『黒竜から揚げ!英雄のモンキーマンザップが揚げてます!』
マイが屋台の上に掲げた看板にはそう書かれていた。黒竜の肉は死ぬほどある。売っても売り切れてないので、世間に還元するのも悪くないだろう。ドラゴンの肉は滋養強壮のみならず、食べると何らかのスキルを手に入れる事が多い。もっとも極小確率で腐食の息というスキルを覚えるかもしれないのは恐ろしいが。
始めの内はポツポツとお客さんが来るだけだったけど、気が付くと、列の最後尾が見えない位にお客さんが並んでいた。
僕は無我夢中でから揚げを揚げつづけた。いつの間にかラパンとシャリーも手伝ってくれていた。
「ザップ、ありがとう。お祭り大盛況だったわね。じゃ、乾杯!」
終わったあと、マイと2人で飲んだ冷えたエールは最高だった。