収納のスキル進化
「でねー、と言うわけでね、今日はから揚げにしようと思うの。というわけでー、そろそろ一旦帰ってきたら。リナのポータルつかったらすぐでしょ。じゃ、待ってるわー」
マイは、なんか手のひらサイズの小さい板に向かって話かけている。微かにその板から声が聞こえる。誰かは解らないが。そしてその後その板をチョンチョン触っている。何をしているのだろうか?
「マイ、何してるんだ?」
「え、ルルと話してたのよ。ザップもしかしてスマホ知らないの?リナから教えて貰ってないの?」
マイは僕を見て首を傾げる。なんだ?スマホって何なんだ?
「マイ、何だそれ?俺はしらんぞ?」
「えーっ?リナもしかしてザップには教えてないの?そう言えばリナ最近忙しそうだしね。それにザップって最近本ばっかり読んでるしねー。しょうが無いわね」
マイは、僕に板を見せる。それは小さいタブレットみたいで、画面のようなものがあって色々小さい絵が描いてある。
「じゃあ、ザップ、まずはザップのスマホ出して」
ん、スマホ?そんなの持ってないし……
と思っていたら、僕の手にもスマホと言う物がいつの間にか現れていた。
「この前しばらくリナは異世界って所に召喚されてそこにいた邪神を倒して来たらしいの。そしてその世界にあったものをこっちで再現して、そのうちの1つがスマホなのよ」
マイはそう言うと、僕にスマホの使い方を教えてくれた。
タブレットの小さい物みたいなので、画面の小さい絵、アイコンを触るといろんな効果を発揮する事が出来て、念話のような事や、時間差のない文通のような事や、お金や物のやり取り、あまつさえ中に貯めてあるスキルを放出する事も出来るそうだ。
あと、シャメという能力で、小さい魚の目のようなカメラと言う物を向けた方向の景色も保存ができる。その画像は映したものそのもので写真というらしい。しかもそれをメンバーに送る事も出来る!
リナが僕の収納スキルをいじって作ったそうだ。
最近の戦いで僕もレベルアップでスキルアップしたと思われるので収納スキルの成長の方向性をいじられたのだろう。さすが魔王恐るべし。
確かにとても便利だけど、まずはスキルの保持者である僕に使い方を教えて欲しいものだ。
そして訳の解らないまま、ラングというグループで会話出来るやつに参加させてもらった。
『もうじきバイトおわるから、ザップハウスに集合!』
ラパンのアイコンのウサギちゃんが話している。なんか解ってきたぞ。
『まってるぜよ!』
僕も文字を打ち込んでみる。ん、ぼくのアイコンは猿になってるぞ……
「マイ、なんで俺は猿なんだ?」
「まぁ、みんなが解り易いかなっておもってね。気に食わなかったら替えれるわよ」
「まあ、当面は猿でいいよ」
それにしても凄い。タブレットも便利だったけど、スマホはもっと便利だ。収納の中の物の整理はタブレットの方がやりやすいが、それ以外ではスマホの方が断然性能が上だ。さすが異界の英知がつまっているだけはある。
フォルダというバックみたいなアイコンで色々な収納の中の物が整理整頓されている。しかもいつの間にか鍵のついたみんなの私物の入ったフォルダもある。マイが言うには、アイコンはタブレットに絵を書く事で自分好みにカスタマイズ出来るそうだ。
あっ、そうだな、試しに思いついた事を実行してみる。
出来た!
収納の中に入れた本を読む事も出来る。しかも外国語の自動翻訳機能もあるみたいだ。しかし、どうも使うのには魔力を使ってるみたいで、いろいろ使ってるうちに頭が痛くなってきた。僕の低いマジックパワーの問題だろう。
隣の部屋同士でマイと遠話したり、少女冒険者四人組とラングで文字で会話したりひとしきり遊んだあと、みんなで集まってから揚げパーティーをした。
僕自身は便利になっただけのような気がするが、他のみんなの大幅な強化になった気がする。
「ご主人様、いい写真持ってるので送りますね!」
みんなでまったりコーヒーなど楽しんで居るとき、アンからマイの着替えを撮影した画像が送られてきた。
「うわっ、アンちゃん、これってあたしの後ろ姿じゃないの、しかも着替え中の……」
僕のスマホを後ろからマイがのぞき込む。
「ザップ、だめだめ消して消して」
「わかった」
僕はゴミ箱のアイコンの中にその画像を捨てる。
「1つルールを作ろう。許可なく他人の写真をとるのは禁止だ!」
僕にみんな頷いた。
所詮僕のスキル、そのあとゴミ箱復元の機能を頑張って作って、その写真をプライベートフォルダに隠したのは僕だけの秘密だ。