補足 アダマックス
「それで、2代目最強の荷物持ちって何だよ」
僕たちは、マリアさんの店で美味しい料理に舌鼓をうちながら、歓談している。今日は慰労をかねての祝いの席なので、僕は一杯だけエールを飲む許可をマイからもらった。お酒が回らないようにちびちび飲んでいる。
「え、ザップって登場の時に『最強の荷物持ちモンキーマンザップ参上』って言うんでしょ、僕はザップの力を引き継いでるから、そういうのが必要だって聞いたから」
ラパンはきょとんとして僕に答える。え、なんでそんな事聞くのか的な感じなのか?
「おいおい、俺はそんな事言った事ないぞ、それは吟遊詩人の歌の中の話だよ」
うん、そんな中二的行為はしていないはず。多分……
僕は妖精ミネアを見る。あ、目逸らしたな。元凶はこいつか。実害はないけど、こっぱずかしいから止めて欲しいものだ。
そのあと、僕達は夜が更けるまで楽しんだ。もっともお酒は一杯だけで我慢した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「古竜アダマックスいるんだろ!」
僕は懐かしの、マイとアンと出会った『原始の迷宮』にいる。ここは地下49層のエリクサーの部屋の奥、アンと始めて会った大部屋だ。
ずっと疑問に思っていたのが、ラパンの手に入れたスキル、『アダマックス』についてだ。古竜の魔法にしてスキルにして権能、正直訳がわからないけど、確かなのは古竜アダマックスという存在が僕達に干渉してきたという事だ。
何処にいるか考えたら、ラパンのスキルを手に入れた場所から、ここが怪しいと思って来た。
一緒にいるのは、マイとアンと、妖精ミネアと大神官シャリーとラパンだ。大神官シャリーの魔法は魅力的なので、お金にものを言わせて雇っているような形だ。あと、毎日せっせとマイが餌付けしている。あと少しで飯堕ちしそうだ。
『やはり、ばれましたか』
僕達の前に体が透き通った、20才前後に見える女性が現れた。アンと似たような角が頭に生えている。その顔は見た人が二度見するくらい整っている。
「お前がアダマックスか?」
『はい、わたくしが銀竜王アダマックスです。ザップ・グッドフェロー、初めまして。アイローンボー、久方ぶりですね。わたくしは地中深く封じ込められてる身、幻で話す事をお許し下さい』
「すみません、久しぶりって言われても、覚えてないんですけど」
アンは角をポリポリ掻く。
アダマックスの表情が一瞬こわばった。うちの子はアホですまない。
アダマックス言うには、この世界には何体もの古竜が地中に埋められているらしい。
まあ、あんだけしぶとい生き物だったら埋めるしかないしな。みんな考える事は一緒か。
それで、埋められた古竜たちは、自分たちを埋めた土の上にダンジョンを作って、それを育てて掘っていって地上に戻ろうとしてるそうだ。
ダンジョン管理の方法とかは、なんかうだうだ言ってたけど難しくて理解出来なかった。
そして、迷宮都市の迷宮が封印まで届き黒竜王オブシワンの復活したのを知ったアダマックスはラパンに力を貸して、黒竜王を討伐させようとしたそうだ。
まあ、また僕が埋めてしまったんだけど、結果オーライだろう。
そっかダンジョンの幾つかは古竜が作ったのか。古竜アダマックスはまだまだ復活は遠いそうだ。
「俺が掘り起こしてやろうか?」
「いえ、わたくしはここの生活を気に入ってますので、もっと迷宮が深くなった時にはまた遊びに来て下さい。ザップ・グッドフェローあなたに幸あらん事を……」
古竜アダマックスは言いたい事だけ言うと消えて行った。古竜ってみんな自由だな。
僕達は少し世界の秘密に触れた事を満足して迷宮を後にした。