集結
「ザーップ!」
大きな良く響く声、魔王のリナが駆けてくる。横には人魚ナディアが人魚スタイルでふよふよ浮いている。リナは大剣を持っていて、ナディアは巨大なベルを持っている。2人とも、相変わらず水着のような恰好だ。
「あいつは、わらわが倒したかったが、今回はお前に譲ってやった。とは言っても、あいつを倒す方法は思いつかなかったがな。まだまだ強くならないと。それに、わらわも攻撃の種類を増やさないとな」
リナは剣を大地にぶっさして腕を組んでる。果たしてリナはこれ以上強くなる必要あるのだろうか?
「まぁ、どうにかなったという事で、歌いますっ!」
「だめっ!」
歌い出そうとする人魚をマイが止める。ナディアを讃える歌はもう勘弁して欲しい。
「ザップ兄様ーっ! マイ姉様ーっ!」
次はアンジュたち少女冒険者4人が走ってくる。
「さすがザップ兄様ですね! 黒竜王はもういないみたいっすね」
「ザップ兄様、やっと落ち着きましたね。私はあんまり役にたてなかったですね」
「また、王都の吟遊詩人の歌う、ザップ兄様の歌が増えますね」
「よかった、よかったですね。誰ひとり欠ける事なくて」
アンジュ、ミカ、ルル、デルは僕たちに微笑みかける。彼女達4人も出会った時と比べて逞しくなったものだ。
『ザップさーん!』
ずだ袋が走ってきた。ずだ袋から首を出して、それに手足の穴を空けたものを身に纏っている子供位の背丈の女性、導師ジブルだ。スケルトンとの融合は解けたみたいだな。
「よかったな、ジブル、元に戻れて。けどお前、そんなに袋が気に入ったのか? それに、魔法じゃなくて普通に話せよ」
『ありがとうございます。なんというか、声、まだ上手く出ないんですよ。骨生活が長かったからですね。あと、悲しい事に私と融合してたスケルトンは融合の魔法が解けてただの骨になってしまいました。最後に、この袋に穴を空けるのに役立って貰いました。穴掘って埋葬してきました』
ジブルはしみじみだ。骨に愛着が沸いたのか? まるでわんこみたいだな。
「ザップさーん!」
最後はラパンが走ってきた。背中にはぐったりとしたシャリーを背負っている。隣には妖精ミネアがふよふよ浮いている。
「ザップなら大丈夫って思ってたから、僕はアカエル兄様や父様と母様を街中まで避難させてきたよ。ありがとうザップ」
ラパンはルビーのように赤い目で僕を見て微笑む。
「ザップ、お腹空いたから、とっとと帰るわよ!」
妖精ミネアはあいかわらず自由だ。
「よかったですー……もう、くたくたですぅー……」
シャリーは力無く微笑む。こいつには本当にお世話になった。うちには神官系はいないから、今度のために後でしっかりスカウトしよう。
みんな揃ったかな?
「みんな、ありがとう、みんなのお陰でなんとかなった。本当に感謝している。まずは体を休ませよう。あとはまた後でだ。じゃ、帰るぞ」
言いたい事、聞きたい事はたくさんあるけど、まずは家でゆっくりしたい。正直疲れ過ぎた。誰ひとり欠ける事なく帰れる喜びを噛み締めながら、僕たちは元来たリナのワープポータルに向かった。