封印
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
闇の中地響きがする。塔が穴に沈んでいるのだろう。
「グギャアアアアアアアーッ!」
なんかの叫び声が聞こえる。黒竜王の最後の叫びだ。
『ザップ。お前は闇を選ぶ。その時は……』
黒竜王の念話が途切れる。
「そんなの知るか。俺はやりたいようにやる」
口を開いても答えはない。黒竜王、潰れてしまったのか? あれだけでっかい建物に潰されたんだから動ける訳が無いか。
終わりは呆気ないものだ。穴の底と塔の基底部に黒竜王は押しつぶされたはず。どんな再生能力があろうとも、ぺっちゃんこになって再生する場所がなかったら再生のしようがないはずだ。
コツコツ。
横穴から塔の壁を小突いてみる。そんな都合良く塔の窓があるはずないか……
僕は収納に土を入れて穴を広げて塔の窓やテラスを探す。真っ暗で何も見えないので、手探りで進んでいく。モグラになった気分だ。灯りになるものなら、松明が収納にあったはずだけど、火を点けるものがヘルハウンドブレスくらいしかないから、火傷しそうなので諦める。なんとかテラスを見つけて塔の中に入ったけど、結構時間がかかってしまった。
松明を出してヘルハウンドブレスで火を点ける。そこは書庫で、本棚や本を幾つか焼いてしまった。部屋を出て中央の魔道昇降機の所に来るが、当然稼働していない。
「ザップー! ザップー!」
遠くから聞き慣れた声がする。マイだ。
「マイー! 何処だー!」
僕は叫ぶ。正直な所、闇ばかりで少し心細かった。
「待っててー! 少し下がって」
昇降機の所から声がする。僕は後ろに下がる。
ドゴン!
魔道昇降機の扉が吹っ飛んで、そのあとマイが飛び込んで来た。
「ザップ、無事だったのね」
マイは僕に抱きついてくる。少し予想してたけど、嬉しい。
「マイ、何で来たんだ?」
「ザップに逢いにに決まってるでしょ。黒竜王は?」
「ここの下敷きになってる。大丈夫だと思うけど、ここも埋めてしまいたい。早くここを出るぞ」
正直、もう少しこうしていたいけど、まだ完全には終わってはない。
「魔道昇降機を上げ下げしてる魔法のロープが最上階まで続いているわ。それを登るのと階段を上るのどっちが速いと思う?」
少し考える。
「松明持ってるから、階段だろう」
「じゃこっちよ」
マイは僕から離れると、僕の手を引いて走り始めた。
扉を開けて螺旋階段を駆け上る。正直くたくただけど、マイの手が僕に力を与えてくれる。最後の力を振り絞って駆け上がる。
足はパンパンになったけど、ようやく最上階にたどり着き屋上に出る。僕たちを朝焼けが出迎えてくれた。朱の明星が輝いている。
「綺麗ね」
朱に染まったマイが呟く。やっと長い長い戦いが終わった事を僕は実感した。