1対1(タイマン)
ここ数話、あとで手直ししますのでよろしくお願いします。
「アン、良くやった、あとは任せろ」
僕は飛び込み、黒竜王の首筋に渾身の一撃を放つ。ハンマーはのめり込んで、その巨体を吹っ飛ばす。
「みんな近づくな!こいつは俺が倒す!」
黒竜王のハンマーで抉れた首筋はみるみる内に肉が盛り上がってくる。やはり、当然ながら攻撃力不足だ。これからやる事は若干、いや、かなり危険だ。
『まさか、世界の魔法を使える者がいるとは……』
黒竜王から心に直接言葉が届く。念話も使えるのか。
『だが、私の力は健在だ。闇の中ではお前たちでは、私を倒すことは出来ない。人間の魔法を使う事は出来なくなったが、お前達を倒した後、また手に入れる事にしよう』
「何、訳の解らない事言ってるんだ」
僕は歩いて黒竜王に近づく。辺りにポータルを射出する。僕の周りを魔法陣の浮かんだ光るお皿のようなポータルがクルクルと回る。
「お前に後はもうない!」
僕はゆっくりとさらに黒竜王に近づいて行く。
『ザップ、残念だが、お前程度では私を倒す事は出来ない』
「それぐらい解る。お前は何を言ってるんだ。俺はお前を倒す気はない」
『それなら、私と手を組もうというのか?』
「いや、それもない。お前にはずっとここにいて貰う」
僕と黒竜王を囲んで円形に大地がせり上がっていく。
『なにをしてるんだ?』
「さてな、自分の頭で考えろ」
僕はポータルを上手く配置して、僕たちの足の下の土をどんどん掘り進んでいく。こいつは死なないのなら埋めてやる。似ても焼いても食えないようなゴミは地中深く埋めてやる。
『そうか、穴を掘ってるのか。馬鹿か、私は飛べるのだぞ』
かなりの部位が回復した黒竜王は、その体に見合わない小さめな翼を広げる。
「馬鹿はどっちだ、所詮畜生か。何のために俺がお前と一緒に穴なんかに入ってると思うんだ?」
僕は飛び上がると竜の背に飛び乗って、その翼をハンマーで刈り取ってやる。
『なにっ、お前も一緒に埋まる気なのか?お前は自分の命が惜しくないのか?』
「誰がお前なんかと心中するか!」
再生していく翼を叩き潰しながらどんどん掘り進んでいく。少しずつ穴を小さくしているので、黒竜王は身動きがとれない。穴は深くなり、遙か上にルルの魔法の灯りが見える。まだ、なんとか目は見える。まだ浅い。落ちていくかのように穴を掘る。器用に黒竜王は尻尾で僕をはたこうとするが、それもついでに潰してやる。僕のハンマーではこいつに致命傷を与える事は出来ない。僕は考えた。一撃でこいつをぶっ潰すにはどうしたらいいか。そして収納の中に見つけた。ちょうどいい頑丈なものを。
そろそろいいだろう。僕はポータルを回収してドラゴンの背中を蹴って飛び上がり、土を収納に入れて横穴を掘り、そこに飛び込む。僕の計算通りならちょうどいい大きさのはず。高さもすっぽり入るはずだ。
僕は収納の中から、迷宮都市の魔道士ギルドの建物、タワーと言われている魔法で強化された建物である塔を収納から出して穴に出現させた。