2代目荷物持ち復活
辺りの景色が色を失って、何の音も聞こえない。僕は世界にたった1人取り残されたような感じがする。
アカエル大公の口が何か言ってるようにパクパク動くが何を言ってるのか聞こえない。
何かおかしい。なぜ意識があるのか?石になったのなら何も感じなくなるのではないのか?
音と色のない世界のなかでゆっくりと時は進んでいく。
長い間そうしていたような気がするけど、実際は数秒間だったのかもしれない。
おもむろに辺りは音と光を取り戻す。
僕は何が起こったのか解らないで、しばし佇んでしまう。
「焔よ、我が力となりて、まやかしを成せ!幻影火炎!」
僕の後ろから飛びだした人影の手から炎がほとばしる。それは幾つかに別れると現れたのは数人の僕、ザップだ。誰だ?何が起こったんだ?
飛びだした人物を見る。低い背丈に若干痩せた体。良く見慣れたしばらく僕自身だった少女、ラファだ!
「最強の荷物持ち、ラパン・グロー参上!」
僕に向かって、少女はVサインをする。ラファってこんなに闊達だっただろうか?あ、今、ラパンと言ったのか?
「ラファ、いや、ラパンなのか?」
「そうよ、何いってんのよザップ、夜だからって寝ぼけてんの」
僕の後ろからコウモリみたいなものがパタパタ飛んできた。少し暗いからそう見えたが、蝶のような羽に人形のような体、妖精、妖精ミネアだ!
「ミ、ミネア、死んだんじゃなかったのか?」
僕は妖精をじっくり見る。まごうことなく妖精ミネアだ。
「何言ってんのよ、ザップ、あたしがあれくらいでくたばる訳ないでしょ、自分の術で死ぬなんてバカな事するわけないじゃん!」
ああ、ミネアだ。よかった。いかん、また涙腺が緩みそうになる。
「幻影火炎!」
ラパンの声がして、次は数人のラパンとミネアが現れる。
「ラパン、何してんだ?」
「弾よけよ、次は大技ぶっ放すから時間稼ぎよ!黒竜は多分目が見えてない。気配だけで判断してるみたいだから、今、混乱してるはずよ!ミネアぶっ放して、あとザップ、収納からみんな出して!すぐ!今すぐ!」
何だか解らないけど、ラパンの必死さを感じて僕は下がり、収納から石化した仲間達を出して地面に横たえる。
「何が、何が起こっている?ラファ?ラファなのか?」
困惑したアカエル大公の目から出た光が幻影に当たって消える。石化の呪いは生物にしか効果無いっていってたから、生きている幻影なのか?しばらくの間で、黒竜王は肉塊から竜の型を取り戻し、アカエル大公の顔の横には複数の顔が浮かび上がる。
「ラパン、準備完了よ。回収頼んだわよ!」
「おっけ!任せて!」
「魔法の無い世界!」
妖精ミネアの手から出た光が暗黒竜に突き刺さり、そこから眩いばかりの光が溢れ出した!