ドラゴンゴルフ
「待たせたな、準備出来たぞ!」
マイの所に戻るとちょうど良い事に、エルフの野伏デルが僕の抜けた穴を埋めて戦っていた。デルにはこれから頑張ってもらう。
「マイ、アンジュ、ドラゴン達の足を切り落とせ。デル、アンはドラゴンを穴にぶち込みまくれ!」
そういえば、貴族の遊びで棍棒でボールを打って穴に入れるゴルフという遊びがあるという。
「ドラゴンゴルフ、スタートだ!」
ここからはワンサイドゲームだ。
「その前に、今のうちに行きますっ!聖なる神よ我らに加護をマキシマム神の祝福からの、神の呪い!」
シャリーの声が後ろからする。少し振り返って見ると、ルルがラファとジブルを受け取っていて、シャリーは僕らに近づいている。
シャリーから溢れた光が辺りを包み込む。僕たちには力が満ちあふれ、ドラゴン達は見るからに動きが遅くなる。両面バフ恐るべし。
「シャリー、危ないから下がれ!」
僕はシャリーに声をかける。シャリーがやられたら、石化の呪いを解く事が出来ないし、祝福が切れたら呪いや精神魔法に無防備になる。
「はーい」
シャリーは素直に下がったみたいだ。
「喉も休めたし、アンコール行くわよ!」
げっ、ナディアが復活してる。
「「「ナディア、ナディア、プリティ人魚」」」
また、僕たちは大合唱を始める。そしてドラゴンゴルフは始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ナディア、ナディア、ホールインワン!」
僕がハンマーで殴り飛ばした最後の雑魚黒竜はアーチを描いて穴に吸いこまれて行った。見事にホールインワンだ。穴から這い上がって来ようとしたドラゴンも巻き込まれて落ちて行く。穴に駆け寄りポータルを射出して掘ったときに収納に入れた土砂をガンガン穴に注ぎ込む。みるみるうちに穴は塞がれて、走って来たアンが巨大なドラゴンになってその上を踏み固めていく。埋めた黒竜は死にはしないだろうから、あとで彼らを元に戻す方法が見つかったら掘り起こしてやる事にしよう。
あと、残るは黒竜王だけだ。黒竜王は高速で回復しているが、リナの怒濤の攻撃の前に押されているように見える。それに、マイとアンジュも加わりさらに回復が追いつかなくなる。
そして、リナの大剣でついに黒竜王の首が落とされる。その時何か違和感を感じた。
そうだ、シャリーの祝福の金色の光が薄くなってる者がいる。リナ、ナディア、シャリーだ。よく見ると、リナのビキニアーマーの色もおかしい。いつもは金色なのに煤けた灰色になっている。
「リナ様!成敗してやって下さい」
ナディアが歌うのを止める。
「これで最後だ!金色魔王砲!」
リナのエネルギー砲が黒竜王だった肉塊に突き刺さる。エネルギー砲は黒竜王に当たった瞬間少し抉ると消えてしまった。
「なかなか、厄介だったよ、一撃で決めないと警戒されるからな」
肉塊からアカエル大公の顔がせり上がって言葉を紡ぐ。
「歌いながらでも魔法は使える。不愉快な歌だったがな」
リナは動かない。体が石になっている。ナディア、シャリーも石化している。やられた。厄介な3人にターゲットを絞ってジリジリと加護を削っていたのだろう。そして一撃で石化出来る機会を待っていたのだろう。
「では続きを、始めようか」
恐ろしいスピードで黒竜王の体は再生していく。