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 マイの策略


「ザップ、解ったわ。もう頭上げて」


 マイからはもう冷気は出ていない。やっと誤解は解けたみたいだ。


「けど、ザップが悪いのよ。誤解招くような言い方するから。それと、もう、置いていかないでね」


 マイは腕を組んで僕から目を逸らす。暗いし覆面をしてるので、表情は解んないけど、多分照れてるのだろう。


「という事は、駆け落ちではなくてカチコミなんですね。うう、この歳で犯罪者街道まっしぐらですね……」


 シャリーが泣くふりをしてる。けど、そうなんだよな。僕がしようとしている事は客観的に見ると、魔道都市アウフの王族の暗殺。うん、犯罪者になる可能性があるよな。


「シャリー、掻っ攫って言えた義理じゃないけど、俺達にはお前が必要だ。頼む、力を貸してくれないか?」


 僕は今更だけど、シャリーに深々と頭を下げる。逆の立場だったらたまったもんじゃないもんな。


「いやですねー、冗談ですよ、暗黒竜王オブシワンが関わってるかもしれないのに逃げる訳ないじゃないですか。聖教国の1人としてそれは見逃せないです」


 シャリーは手をパタパタする。


「すまない。シャリー、もしもの時には俺達に脅されたって事にしといてくれ」


「ザップ、その頼み方、それがなんていうか女の子口説いてるみたいに見えるわ。『お前が必要だ』じゃなくて『お前の力が必要だ』って言わないと、ほら、シャリーちゃん赤くなってるわよ」


 マイはシャリーのほっぺたをぷにぷにしている。

 そうなのか?やはり言葉って難しいな。けど、熱くなるとどうしても何事も上手く言えなくなるな。もっとしっかり考えるようにしよう。


「けど、マイ、どうしてここにいるんだ?それにその恰好は?」


 僕は歩き始めたマイについて行く。その前にいる黒装束にマイはついて行ってるみたいだ。もう1人の黒装束は痩せていて胸が薄い。という事はデルだな。


「そりゃあ、ザップを待ってたのよ。多分ザップはあたしたちを置いてくだろうと思ったから」


「なんでそう思ったんだ?」


「挙動不審。なんか柄になく明るく振る舞おうとしてたし、ザップはなんかないと、戦いに行く前にお酒なんて飲まないでしょ」


 う、まじか、もろバレだったのか……


「だから、もし黙って出てくとするならシャリーちゃんを連れてくと思ったから、ルルに頼んで魔力回復させるためにシャリーちゃんを寝かしつけて貰って、あとワープポータルに必要だからリナちゃんも連れてく筈だから、ザップハウスから離れるように誘導して、ナディアちゃんを連れてきて先回りした訳よ」


 むぅ、マイに完全に踊らされていた訳か。マイ恐るべし。というか、僕ってそんなにわかりやすいのか……


「この服はみんなの人数分あるわ、ナディアちゃんが持って来てくれたの。高レベルの認識阻害のスキルがついてるわ」


「認識阻害のスキル?みんな?因みにマイはいつから僕たちを見てたの?」


 僕はギギギとマイの方に首を向ける。


「なんか、ザップがシャリーちゃんを養ってあげる的な事言ってたわね。待てども待てども来ないんで探しに行ったらまさかイチャイチャしてるとは思わなかったわ。みんな出て来ていいわ」


 黒装束が僕たちの周りに現れる。


「うおっ、ま、まさかっ!」


 僕は全身が熱くなる。人数からしてみんないる。ジブル袋をかかえている人もいる。


 という事は、さっきリナとシャリーに掴まれてだらしない顔してた僕は、ばっちりさらし者だったのか?


「リナちゃん、どうしたの顔真っ赤よ?」


 マイがコロコロ弾んだ声でリナに言う。


「赤くなってなんかおらぬっ!」


 リナが少し声を荒げる。


「リナちゃん、この服、暗視能力もついてるのよ。昼間ってほどじゃないけど、よーく見えるのよ」


 マイの言葉にリナが顔を隠す。ここまで焦るリナを初めて見た。シャリーも顔を隠している。


 という事は、僕も丸見えだったのね……


 まさか、こんな結末になるとは。僕も顔を隠したいけど。平静を装い堂々と振る舞えたはずだ……


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