金剛の斧
『けど、契約を結べば古竜魔法が使えるはずですよ』
ホネホネのジブルが囁く。やっと僕はその不気味さにも慣れてきている。けど、早く可憐な幼女に戻してあげたいものだ。
「それで、どうやたら契約出来るの?」
風呂上がりでバシャマのマイがいつの間にか僕の後ろに立っている。気配が全くしなかった。時たま思うけど、もしかして僕よりマイの方が強いのでは……
その後ろから4人娘とリナとナディアもやって来る。むぅ、人口密度が高いな。しかもなんかいい匂いがする……
「えー、私、契約の方法とか知らないですよ」
アンがマイに答える。やはりアンだ。多分忘れてしまったのだろう。なんか記憶力が良くなる食べ物とかないのだろうか?こいつは食べ物の事なら忘れないのに。
『それで、アダマックスですけど、まず、なんでそれについて知りたいのですか?』
ジブルが小首を傾げる。骨なので可愛くない。
「前に太古の迷宮でラパンちゃんがスキルポーションを飲んで手に入れたスキルがアダマックスよ」
冒険者4人娘の魔法使いルルが答える。けど、ルルだけは見ないようにする。マイの視線が怖いのと、やっと収まった体の一部がまた元気になるかもしれないからだ。
『そうなのですね。アダマックスは【金剛の斧】と言う意味で、金剛化、ものを壊れなくする権能をもってる古竜と言われています。そのスキルポーションを手に入れたと言うことは、倒した竜がアダマックスの眷族だったのでしょうね。因みに古竜魔法は絶対的な力、不可避な力などを持ってますけど、契約出来るのは1つだけ。しかも契約は解除できないそうです。失礼かもしれませんが、アンさんの権能、投擲必中は尖ったスキルなので、契約はしっかり考えた方がいいかもしれないです。因みに古竜の黒竜王オブシワンの権能は魔法必中、アカエル大公はこのスキルをもってるのかも知れないです。私の知ってる事は以上です。もう限界です。お休みなさい』
カラカラカラ!
言い終わるとジブルは崩れてテーブルの上と床に骨が散乱する。眠ったのだと思うけど、なんて気持ち悪くはた迷惑な寝方なんだ。
誰も言葉を発さない。うん、不気味だもんな。当然誰も拾わないので、僕は袋を出してジブルの骨を集めていく。ああ、なんか悲しい気分になってくる。こいつは袋から出さないようにしよう。この微妙な空気を再現しないためにも。
古竜魔法か。
なんか解ったような、解らないような。ラファが起きたら聞いてみないと、アダマックスの事は解らなさそうだ。
ん、そう言えば誰かいないような。
「あ、そう言えば、シャリーは?」
「シャリーちゃんなら、ラファちゃんと一緒にマリアさんの所で寝てるわよ。あの娘、間違ってお酒飲んじゃったみたいで」
それは朗報だ。彼女にはしっかり眠ってもらって魔力を全快にしててもらわないと。
「マリアさんとこには空いてるベッドがもう一つあるはずだから、リナとナディアはそっちで護衛もかねて泊めてもらって、あとのみんなはこっちで寝たらいいんじゃないか?俺はここで寝る。では、解散!」
僕は手を叩いて終了の合図を告げる。さすがにもう寝ないと早起き出来ないからな。