古竜魔法
『お待たせしました。ザップさん。古竜魔法についてですよね。アンさんも連れて来ました』
心と体を鎮めるため、ソファでコーヒーを飲んでいると、ジブルとアンがやって来た。
アンはパジャマにナイトキャップ、ちゃんと角の所に穴の空いたスペシャル仕様だ。ジブルも生意気にパジャマを着ている。なんか見たことあるような柄なので、多分アンのお下がりだろう。
「あ、お前さっき言ったの聞こえてたのか?」
『はい、私、一応返事したのですけど、ザップさん、他の皆さんを見るのに夢中で聞こえてないようでしたので。それに、なんかあんまり真面目な話が出来なさそうな雰囲気でしたので』
さすがに女の子達がはしゃいでる環境は話しづらい環境だったと思う。
「う、すまない…」
一応謝る。はい、水着に夢中で何も聞こえてなかったです。
「じゃ、単刀直入に、アダマックスって何だ?」
『古竜の名前で魔法でスキルです』
ん、ジブルの言ってる事は全く意味が解らない。
「もっと分かりやすく説明してくれないか?」
ジブルはソファに腰掛けると、顔の前で指を組んだ。本人は真面目な顔をしてるつもりなのかもしれないが、表情が無いので、正直すこし不気味だ。
『そうですね、アンさんで説明させていただくと、アイローンボーというのはアンさんの真名ですよね。その意味は【鋼鉄の弓】、その権能は投擲具の命中率アップや必中のスキルですよね。古竜魔法アイローンボーは投擲必中効果の魔法で、アイローンボーの眷族には投擲具の命中率アップの加護があるといわれてます』
ジブルは一息ついて、髪を掻き上げる仕草をする。髪の毛は無いのに……
ツッコミ所満載でパントマイムみたいだけど、話の腰を折るのは止めとこう。ただでさえ話が長いのにさらに長くなりそうだ。
「へぇ、そうだったのですね、なんかそういう話、前に聞いた気もします」
アン、お前、自分の事だろう。
「そうか、それでデルに必中のスキルがいつの間にかついてたり、マイが投げるものはかならず俺に命中する訳だな」
マイやデルの資質の問題かと思ってたけど、アンからの加護があったのか。ん、待てよ、それなら……
「じゃ、なんで俺はノーコンなんだ?夜市の輪投げとかでは基本的になんもとれないぞ、俺にはその投擲の加護っていうのはないのか?」
僕は基本的にものを投げるのは不得手だ。それにクロスボウですら上手く使えないし、弓やスリングとかはもっての他だ。それが出来ればもっと有能な荷物持ちになれたと思う。
それにしても、マイたちに加護があるのに、なんで僕にだけ加護がないんだ?僕の方が多分アンとは仲がいいのに。実際はハブられてたのか?
「そりゃ、ご主人様だからですよ、仲間ではなくて尊敬する人ですから、私より上の存在ですからそりゃあ加護なんか無いですよ」
うう、なんか納得いかない。なんか、いいように言いくるめられたような気がする。
僕はとりあえず、その事は置いといて、核心について聞く事にした。