表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/2098

第二十八話 荷物持ち安堵する


「ザップ! 起きて起きて!」


 うるさい奴だな、もう少し休ませて欲しい。


 僕は朦朧とする頭のまま目を開ける。そこには触れんばかりに近づいたマイの顔があった。目は潤んで今にも涙がこぼれそうだ。


 良かった、無事だったんだな。


 横たわってる僕にマイが抱きついてくる。顔先にマイの髪が触れ、お日様のような、そして少し甘い香りがする。柔らかい体が僕に押しつけられる。


 誘惑に負け、マイの頭を軽く撫でる。猫耳がもふもふで気持ちいい。マイの耳がくすぐったいのかピクピク小刻みに動く。

 もう少し猫耳を堪能したい所だけど、こんな事してる場合ではない。僕には絶対にやらなければならない事がある。


「近い。離れろ」


 僕は起き上がり、ゆっくりマイを引き剥がす。マイの体はとても軽かった。さっき運んだときの重さが嘘のようだ。


「ザップ、何が起こったか全くわからないわ?」


 マイが小首をかしげる。


 僕は泉の隣にマイのマントを敷いて寝かされていて、上には僕のマントをかけられていた。


 僕は、すぐそばにある小さな石碑を指差す。


「エリクサーの泉、戦いの前に全てを癒やすがいい?」


 マイは石碑を読み上げる。


「え、エリクサーの泉! そんな夢のようなものが……ザップはそれで……」


 大体の事は伝わったみたいだ。


 僕はノソノソと起き上がり泉のふちに座り、収納にエリクサーを入れ続ける。今度はもしもの時のために、十分過ぎる以上に汲むことにする。エリクサーが吸い込まれていくのをマイが興味深そうに眺めている。


「なんで、待ってなかった?」


 僕がマイの立場だったら、絶対に広間には入らない。ただ死ぬだけだからだ。


「待てなかったから! 待つのが嫌だったから!」


 マイは即答する。訳がわからない?


「死ぬ所だったんだぞ、現に死にかけた」


「ザップと、ザップと別れるのが嫌だったから……」


 マイはそう言うと泣き崩れた。本当に、訳が解らない。けど、僕にはなんて言えばいいのかだけは解る。



「ありがとう」



 僕は素直にそう思えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ