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 ドラゴンの真名


「ザップ、ほどほどでいいんじゃ無い?」


 浴槽の中からマイが僕に問いかける。


「ああ、あと少しだ」


 僕は今、ブラシで風呂場の床を掃除している。まだほのかに鶏ガラスープのような匂いがする。


『ザップさん、そんなに一生懸命掃除してるの見たら、なんか私が汚いものみたいじゃないですか…』


 椅子にちょこんと座った小柄なスケルトンが囁く。生意気にチューブトップのブラとパンツの水着姿だ。骨に上手く布が引っ掛けてあり、なんかゴツゴツしていて正直気持ち悪い。


「大丈夫だ、汚くはない。少し染み出す匂いがきついだけだ」


 僕のフォローにジブルは黙りこくった。


 因みに僕たちも水着着用だ。僕は普通のトランクスタイプの水着で、マイは白いフリフリの付いたセパレートタイプの水着で、アンはピンクのワンピースだ。正直2人ともめっちゃ可愛い。


「ご主人様、まだ温泉のお湯スープの味がしますね」


 ドラゴンの化身のアンがドラゴンらしい爆弾発言をする。


「え、お前、飲んだのか?」


「はい、温泉のお湯って体に良いって言いますしね」


「アンたんのあんぽんたん!それって普通は源泉を飲むのよ。あたしとあなたとジブルの出汁が出たお湯飲んでどうするのよ。お腹壊すわよ!」


 う、言いたくても言えなかった語呂のいいセリフをマイが言いやがった。


「大丈夫ですよ、マイ姉様やジブルの出汁程度ではお腹壊さないですよ。鍛えてますから」


 アンが自分の胸を軽く叩く。以外にアンの胸って大きいんだよな。鍛えてるって、何してることやら。


 それにしても、マイの出汁……なんかへんな方向に心が動いたけどその思いを遙か彼方に吹っ飛ばす。いかん、僕は決して変態では無い。


 なんか無駄にドキドキしながら体を軽く流して温泉に浸かる。マイの出汁の出たお風呂…


「なんか、3人でいるのって久々じゃないか?」


 僕は謎の動揺をできるだけ抑えてゆっくりと話す。


『あのー、私も人の数に入れて欲しいです』


「ああ、悪い悪い」


 ジブルが拗ね無いように一応フォローしとく。


「そうね、昔は3人だったわね。けど、3人とも石になってたのよね。みんなのおかげで今はこうしていれる。感謝しないとね」


「そうだな、感謝しないとな」


 ゆっくりと時が流れていく。このまま時が止まればいいのに。アカエル大公や魔道都市の事は忘れて3人できままな旅にでてもいいんじゃないか?なんで戦わないといけないのだろう。そう思ったけど、すぐに妖精ミネアとラパンの事を思い出す。彼女たちの思いを無駄にしないためにも戦わないと。


『ちょっと気になった事があるんですけど』


「ん、どうしたジブル?」


『アンさんの本名ってアイローンボーって言うんですよね、それってあのアイローンボーですか?』


「はい、多分そうですよ」


 アンは事もなげに答える。


「何の事なんだ?」


 なんか仲間外れにされた気分だ。


『え、ザップさん、知らなかったんですか?アイローンボー、シルメイス、ゴルドラン、ミスリード、アダマックス、そしてオブシワン。古竜魔法ですよ』


 ん、なんかアイローンボー以外にも聞いた事のある言葉が!


「ジブル、ちょっとまて、よく聞かせろ」


 僕は勢いよく立ち上がる。勢いよく立ち上がりすぎた。水分を吸って重くなった水着は僕のスピードについて来られなかった。僕は何が起こったのか頭がついてこなかった。


「あ…」


 横にいたマイを見る。視線は僕の下の方。


「キャアアアアッ!」


 マイの悲鳴が響き渡る。


 ガラッ!


「マイ姉様!どうしました!」


 冒険者4人娘が風呂場に飛び込んでくる。出歯亀してたのか…


 我に返り水着を着なおすが、時すでに遅く、僕は何か大事なもの失った……

 


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